焙煎日記 デベロップメントサイクル(補足Ⅱ)

2017/06/02

投入から豆の表面温度が167℃に至る時間が6分から、7分に延長した時、劇的な変化が訪れました。

1分延長したのは、6分だと水抜けがなんとなくしっくりいかないと判断したからですが、後半の成分進化の工程をきちっりと同じにすれば、その判断が正しかったかは、カップに如実に現れてきます。

結果として、クリーンカップが出てきましたから、判断は正しかったわけです。

それよりも思いもかけずに得た収穫は、水抜けのタイミングが若干早くなった結果、早めに釜の内部温度を引き上げることが出来、成分の進化をより適正に進化させることが出来きたことです。

6分の場合,水抜けは2分後の8分前後に完了しますが、1分延長して7分の場合、水抜けは同じように2分後の9分前後ではなく、若干前倒しになって、8分45秒前後になります。

このことは、通常より15秒も早く釜の内部温度を引き上げることができ、釜の内部温度の上限の230℃まで早く到達することができます。成分の進化をより高い温度で、かつ長く即すことができ、風味特性を向上させることが出来たわけです。

このことから、もっと早く水抜けが完了することができれば、より早く釜の内部温度を引き上げることができ、理想的な風味特性を表現することが可能となるはずです。

例えば8分30秒前後で水抜けが完了すればよいわけで、そのためには水抜きの工程をさらに延長すれば可能性が出てきます。

延長は豆の表面温度が167度に至る時間を1分ずつ延ばしていけばよく、たとえば、8分で167度に至らせたとき、水抜けが9分45秒前後ではなく、9分30秒に前倒しになっていれば成功です。

このときトータルの時間は12分で、水抜き工程を1分延長した分だけ長くなるように、成分進化の工程をきっちりと同じにすることがポイントです。

さらに1分ずつ延長していけば、トータルで13分、14分と延長していくわけですが、これではもはや“低温短時間焙煎”とはいえなくなってきます。

焙煎のトータル時間が違ってきても、焙煎度合いは少ししか変わっていません。それは延長は前半のみで、後半はきっちりと同じ進行を守っていることからですが、適正な焙煎時間、、、そう、焙煎度合いから開放された、焙煎そのものの適正時間はあるのか?という究極の課題も視野に入ってきました。

「purofairu.xlsx」をダウンロード



添付のファイルは投入から7分で豆の表面温度が167度に至るペースのプロファイルで、Aが9分の時点で釜の内部温度を引き上げたもの、Bが8分45秒で、Cが8分30秒で引き上げたものです。

7分の時点でカウントして、4分後の11分で豆の表面温度が191~2度前後に至るようにコントロールしていくわけですが、その間に水抜けのタイミングを確認してから、火力を最大にして釜の温度を引き上げていくという作業を伴いますので、水抜けが奥に行くほど、残された時間は非常にタイトになり、成分進化が十分ではなくなってきます。

ファイルは水抜けとは関係なく、機械的に9分・8分45秒・8分30秒で内部温度を引き上げたものですが、今までの経緯からAもBも水抜けが完了していることは、お解かりいただけると思います。

まずここで注目していただきたいのは、内部温度の引き上げの最大値である230度に至るまでの時間差と、投入から9分の時点での内部温度の差です。

最大値230度というのは、それ以上の内部温度では成分進化が歪になり、アフターやマウスフィールが刺激的になります。

Aの場合、10分になっても230℃に至りません。9分で火力を上げるのは遅すぎるわけですが、これを改善しようとすれば、バーナーをもっと増設して、BやCのように9分40~50秒台にいたるようにすれば解決するように思いますが、ところがどっこい上手くいきません。

バーナーを増設した結果、9分50秒で230℃に至っても、過激な火力が豆の表面を必要以上に焼いてしまい、その結果、風味特性をマスキングして、刺激的なアフターやマウスフィールを作り出してしまいます。

こうした強力な火力の場合、10分で240℃以上に至りますから、カップから「240℃はだめ!」と判断しますが、直接の原因は過激すぎる火力であることが分からなければ焙煎は見えてきません。

火力が過激すぎる場合、内部温度が230℃に至る過程ですでにマスキングが起こってしまっているからです。温度表示では解釈できない一端がここにあります。

僕の場合、過激すぎる火力から、一本一本バーナーを減らしていって、最大火力でもマスキングが起こらないバーナーの最大本数(投入量で変化します)を導き出していきました。

そして、釜の内部温度が230℃になったら、それ以上には上昇させないようにガス圧を落としていきます。それ以上だとカップがやはり歪になるからです。

当たり前ですが、内部温度と時間経過によって成分の進化は左右されているからで、この意味では数値を基準にしていかなければなりません。

また、ブラジルのナチュラルのパーストクロップやドミニカのナチュラルは最大値を220~225℃に抑え、すぐにガス圧を下げていきます。こうしないと豆の表面温度の進行が急激に進行してしまい、11分で191℃前後というデベロップメントサイクルが崩れてしまうからです。

焙煎が迷路のようになるのは、このように原因が複雑に絡み合っているからです。

そして、今回の最大のテーマですが、投入から9分の時点での釜の内部温度が成分進化に大きく作用しているようです。

釜出しの11分まで2分の猶予がありますが、Aの場合、この時点で釜の内部温度を引き上げていきますから、内部温度は180℃前後です。そしてBは189℃、Cは199℃に至っています。

それぞれこの約10℃の差が、それぞれの成分の進化に決定的に作用することになります。

Aは明らかな進化不足のカップが出てきます。ドライ・クラスト・ブレイクでは遜色のない印象ですが、スイート・フレバー・マウスフィールでは印象が薄く、特に口から鼻腔に抜けていく、フレバーの印象がスポイルされてしまっていて、コーヒー自体の存在感が薄れています。

かつて恩師がよく「クットこない、、」といわれましたが、まさにこのことを表現していて、焙煎の工程に何らかの成分進化の工程を意図を持って焙煎しないと、単なるベイクドに終わってしまうことを警鐘していました。

Aの場合は成分進化の意図はあっても、あまりにも立ち上げが遅すぎるわけです。

Bはずいぶんと改善されてきます。特にフレバーのたちあがりよくなり、甘さやマウスフィールも改善され、ストラクチャリーな奥行きも出てきます。

Cになると、さらに質感・マウスフィールにおいて、オイリーなのか、ミルキーなのか、といったその詳細が認識できる次元に至ります。


ただ、水抜けと火力のアップが紙一重で逆になった場合、クリーンカップがスポイルされる危険性が多分にあります。


低温焙煎においては、常にこの危険性と隣り合わせであるわけです。


次回からはこの問題も含めて、“究極の焙煎時間=15分焙煎”にせまってみたいと思います。




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