焙煎日記 ロースティングポイントを探す
2018/03/01
今回からは焙煎における最重要課題といっても良い、後半の成分進化を検証していきます。
高温短時間焙煎にしろ、低温焙煎にしろ、成分進化の良否はプロファイルにおける豆の
表面温度の進行ペース=グラフの“傾き”によって決定されます。
上のプロファイルは、15分焙煎の202℃で終了するシティローストのプロファイルです。
およそ投入から9分で豆の表面温度が167℃に至り、10分45秒で水が抜け、火力を一気に上げて、
釜の内部温度を上昇させます。
内部温度をを引き上げてから、やや遅れて豆の表面温度が急激に上昇し始めます。
13分で192℃に至ってからそのペースを落として、14分で197℃、15分で202℃と1分に5℃ペースで
上昇しています。
釜の内部温度が最大で240℃近く上昇したら、火力を落としていって、豆の表面温度の上昇ペースを
コントロールしているさまを読み取れます。
(この時点の温度数値は、投入する豆の種類によって千差万別です。今後、豆の種類別のプロファイルを
開示していきます。)
これは、過去僕が試行錯誤して導き出した、進行ペースです。
今一度、過去のデータを整理して、このペースに至るまでの試行錯誤の過程を説明していきます。
上の赤いグラフBのプロファイルは、最初の15分・202℃のシティローストの最終段階のプロファイルです。
これと、2.5℃高い青いグラフAと2.5℃低い緑のグラフCの3つのグラフ上のピンポイントを比較します。
説明の都合上、出発は13分・192℃の時点からですが、ここからの出発ではなくても、最終的に
➀~⓹のピンポイントで終了したものを、カッピングで比較検討すればベストなロースティング
ポイントが導き出されます。
(これは14分30秒から15分30秒以内でグラフBを上下に平行移動させることになります。)
結論から申し上げますと、B線上の⓶(15分・202℃)がベストのロースティングポイントになります。
■まずAの➀、Bの⓶、Cの⓷を比較検討します。(横のライン)
どれも202℃で終了しますが、進行ペースに差をつけるため、➀は14分30秒で、⓶は15分で、⓷は
15分30秒で終了させます。
同じ202℃の終了温度ですが、➀は⓶より高い傾斜で30秒早く、⓷は⓶より低い傾斜で30秒遅く終了します。
ロースㇳの色合いは時間差と傾斜の差が織りなしますが、傾斜が高いほうが若干深くなると思います。
これは、火力の強弱の差による要因と思われます。
カップは➀と⓷がレスクリーンで、媚びたアフターが出てきます。当然マウスフィールも悪く。
⓶はクリーンでマウスフィールもアフターも良いカップとなります。
(この時点では、傾斜の高低差がカップを左右するように判断できますが、次のカップで驚く
べき結果が出てきます。)
■そして、Aの⓸、Bの⓶、Cの⓹を比較検討します。(縦のライン)
どれも15分で終了しますが、進行ペースから⓸は204.5℃で、⓶は202℃で、⓹は199.5℃で終了します。
ローストの色合いは、同じ焙煎時間ということで、温度差により、⓸⇒⓶⇒⓹の順で浅くなっていきます。
カップは最初の➀⓶⓷のカップから、⓸と⓹がレスクリーンで⓶がクリーンであろうと、推測されますが
驚くべきことに、全部クリーンの領域に入っています。
⓸と➀、⓷と⓹と比較することによって、⓸と⓹がクリーンで、➀と⓷がレスクリーンであることは
傾斜によってカップの良否が決定されるのではなく、時間経過によってカップの良否が決定されいると
いう可能性も出てきます。
この方法で1分後の207℃と1分前の199.5℃それぞれの5つのピンポイントを比較しても、同じ結果となり
ますから、1分内にクリーンとレスクリーンが反復して、成分進化がなされていると判断もできます。
そして、⓸⓶⓹の差は焙煎度の違いから、フレバーやスイート、マウスフィールの差になって出てきます。
2.5℃×2で5℃差がありますが、どこがベストと捉えるかはやはり、オーバラルやバランスの領域になって
きます。
この温度差がもっと開いていくと、限界が出てきてカップにひずみが出てきます。
ここでのベストポイントがロースティングポイントで、ここから1分後に5度上昇させたポイント、そして
1分前の5℃差し引いたポイントもベストポイントとなります。
⓸~⓶~⓹の範囲内のどのポイントが良いかは、ロースト度合いとフレバーのマッチングが決め手になります。
⓶の202℃がシティローストにおけるフレバーのイメージとピタリと一致するベストポイントと僕は判断
しました。
まったりとしたマウスフィールに、香ばしいふくよかなフレバーが表出されるポイントです。⓸・⓹も
それなりに良いのですが、ロースト度合いとフレバーのマッチングが今一つで、フレバーの表出がやや
おとなしいく、印象が弱い気がします。
また、季節の変化で、同じ温度でもローストの度合いが違ってきます。
去年・今年の寒さが厳しいころは、同じ202℃でもぐっと深くなってしまいました。シティロースト
よりフルシティに近くなっています。
そして、2月下旬から3月に入ってからの昨今のポカポカ陽気には、ミディアムに近いロースト度合になっています。
こうした季節変動ではロースト度合いとフレバーの表出がマッチしないことが多く、温度の調節がカギ
なってきます。季節の温度変化で、15分の終了温度202℃を変化させて、ロースト度合いを微調整すればフレバーの
表出は良くなります。季節の温度変化で。201℃~203℃の範囲内で調節していますが、まだ結論は出ていません。
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