焙煎日記 焙煎時間の変化によるカップの変化

2017/10/26

従来の焙煎メソドでは、釜出しの表面温度を同じ温度にして、焙煎時間を変化させた場合、
カップがどう変化するか?というカッピングアプローチは、水抜けや成分進化の変化も伴ってしまうため、
その真価を捉えることが出来ません。

また、焙煎時間を同じ時間にして、釜出しの表面温度を変化させた場合も同じです。

焙煎の構造を極めようとするこれらのアプローチは、比較するカップ自体の水抜けや成分進化の微妙な変化で、
一定であるべき前提条件が崩れてしまっていて、焙煎時間や焙煎温度の変化を比較検討しても、
その正確な変化を捉えきれないからです。

焙煎の構造がいつまでたっても解明できず、焦れば焦るほど焙煎の迷路に嵌まり込んでしまうのは、
このためでもあります。

このカッピングアプローチは、焙煎を前半と後半の二段階に分けて、それぞれの段階で、
きっちりと水が抜けているか?成分進化は適正か?と検証する、恩師の提案された焙煎メソドによって
可能となります。

それは前半の水抜き工程で、水抜けを確認してから釜の内部温度を一気に上げて、
適正な成分進化の工程で完結しますから、焙煎時間を変化させても、また焙煎温度を変化させても、
それらはすべて一定の焙煎レベル(水抜け・成分進化)をクリアーしたカップ対象になっているからです。

前回の11分から15分の浅煎りの焙煎は、同じ釜出しの温度・192℃の表面温度で、焙煎時間を変化させたものでした。

それぞれに水抜けと成分進化が一定以上のレベルになっていますから、焙煎時間の変化がもたらすカップの変化を
ダイレクトにカップすることが可能になります。

これを、通常の焙煎メソドでトライすると、時間を短縮や延長する過程において、水抜けが歪になったり、
成分進化が歪になったり、あるいは両者が重なったカップが混在してしまいます。

例えば、投入からの過程を同じようにトレースして、終盤で時間を徐々に延長して時間を変化させた場合、
釜出しが同じ温度であっても、成分進化が全く異なったものが出来てしまい、時間の変化がもたらす
カップの変化を正確に捉えることが出来ません。

恩師の焙煎メソドであれば、これが可能となるわけです。

今まで、従来の焙煎メソドでは特定軸の時間と温度のピンポイントでしか構築することが出来なかった
焙煎ノウハウに、より立体的な時間や温度の空間を取り込む検証ができることで、焙煎ノウハウを構造物
のように立体的に構築出来るようになりました。

焙煎の核心に迫ることが出来るようになったと思います。

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前回は表面温度が192℃の浅煎りの焙煎を11分から15分の範囲で検証しました。

11分は、最初の印象は素晴らしく、特にドライやクラスト、ブレイクで、強い印象を受けます。

しかし、カロリー不足の局面は免れません。特にブレイク以前に粉が崩れ落ちてしまう現象が表すように、
時間の経過とともにボディやフレバーそのものが抜け落ちてしまいます。

12分になると、甘さ・明るさ・滑らかさ・フレバーの輪郭が明確になってきます。
顧客やカッパーはこのあたりを支持する方が多いと思います。フルフレバーローストの定番と言ったところでしょうか。

13分も12分と同じ括りでとらえることが出来、12分よりブライト感が落ち着きを伴ったものになります。

14分から奥行きが出てきて、ストラクチャが構築されてきたことが伺えます。
その分ブライト感やフレバーの印象が少し後退し始めるため、ファーストインプレッションと
ストラクチャ・アフターの印象がともに中途半端で、それが災いしてインパクトが薄く中途半端な感じがします。

15分になるとストラクチャやアフターがはっきりと表れてきて、滑らかさとか甘さの印象度が強くなってきます。

そして、アフターの奥行きが出てくることによって、後退し始めた感のファーストインプレッションの
明るさやフレバーが持続する結果となり、余韻を残しながらフィニッシュしますので、
12分と違った領域で印象度が強くなります。

しっとりとした奥行きのあるカップは甘さや滑らかさを感じ、魅力的なフレバーは咽喉から鼻に抜けて、
余韻を残しながら心地よくフィニッシュします。

このようにカップの結果から、12分と13分、そして14分と15分に大雑把に括ることが出来ますが、
13分と14分はブライトで華やかな12分から、徐々にしっとりと落ち着きのある15分への移行過程として
捉えることが出来ます。

このように、時間の長短がもたらすカップの変化は、ある意味ストラクチャ・アフターの構築過程としてとらえる
ことが出来ます。

これはカッピングスコアのオーバラルやバランスの領域で、嗜好=好みの領域であると捉えることが出来ます。

それを踏まえて、素材の特徴をより生かし、バランスをとるように焙煎時間を選択するれば、より特徴ある
素晴らしい焙煎が創造できると思います。

ローストマスターのセンスの見せ所になるはずです。

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ビール党の僕はいつも思うのですが、12分と15分の違いはビールで例えると、あたかもアサヒの
スーパードライと、サントリーのプレミアムモルツの違いであると思います。

スパードライはファーストインプレッションとアフターの爽やかさを際立たせることに主眼を置いていて、
一方のプレミアムモルツはファーストインプレッションよりボディとアフターの滑らかさと余韻に主眼を
置いていると思います。

両者の違いは、もちろん使用する素材の違いが大きく起因していますが、スパードライが工場出荷から
数週間でフレバーが減退してしまい、出荷すぐのロットの圧倒的なフレッシュな印象や、フレバーが作り出していた
アフターの重層的魅力が減退する現象は、時間経過とともに減退する12分の焙煎のものとよく似ています。

醸造は疎いのですが、おそらくプレミアムモルツは醸造時間をスパードライよりかけて、
ボディやアフターのの重層性を引き出していると思いますが、これは15分の焙煎と似ています。

上質な麦芽100%という素材を十分に引き出すためには、醸造時間が一定以上の十分な時間が必要なのでしょうか、、、

そしてスパードライがファーストインプレッションに特化するために、短い時間で醸造し、素材も麦芽以外の素材
(コメ・コンスターチ)を含ませていることがポイントになると思います。

醸造に関しては全く門外漢の僕が、このように想像をめぐらしこのように書いてしまうと、無責任なのですが、
味覚成分の生成過程と時間との関係がどこか焙煎と似ているようでなりません。

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今回の時間の変化は、浅煎りだけでなく、ミディアムローストやシティローストでも応用が利きます。

投入から豆の表面温度が167℃までの時間を、同じように8分・9分、、と1分ごと延ばすと、水抜けも
1分ごと伸びますから、ミディアムの197℃前後の焙煎を12分から16分のパターンでできます。

同じように、ハイの202℃前後の焙煎を13分から17分のパターンでできます。

シティ207℃、フレンチ212℃も同じパターンでできます。

これを試行錯誤していると、16分以上の焙煎が全て、いびつな要素が出てきてカップがおかしくなってきます。

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