短時間焙煎➁

2021/01/16

2017年にプレゼンテーションされたSCAJの「スペシャルティコーヒー市場調査2016要約」
(http://www.scaj.org/wp-content/uploads/2017/07/Specialty-Coffee-Market-Research-2016.pdf)


に焙煎についての興味深いレポートがありました。


【目次 8.焙煎】
●会員の取扱商品の中心帯は中煎りが79%で深煎りが14%、浅煎りがわずか4%にすぎません。(浅煎りが取扱商品の中でメインである会員が4%!)


●会員の取扱商品の構成比は、ほとんど中煎りと深煎りが主体(86%)となって、残りの浅煎りがわずか14%に過ぎない構成になっています。


●消費者の焙煎の好みの変化については、浅煎りが増えていると好みは変わっていないが拮抗しています。


スペシャルティコーヒーロースターを目指してこの業界に参入して、日々努力している方であれば、上記の3点の結果から、日々感じている「理想と現実の乖離の葛藤」を痛切に感じると思います。


僕も実際販売していて、ほとんどの消費者は「酸味がないコーヒー」を求めてきますし、特にコーヒー好きを自負する消費者ほどこの傾向は強く感じます。


かたくなに酸を否定することが、まるでコーヒー通を自任しているかのような錯覚に囚われてしまっているお客様があまりに多く、こういった方々にどうスペシャルティコーヒーの酸の素晴らしさを伝えていったらいいのだろう!?と日々葛藤しています。


一般的な消費者のこのような嗜好から、会員の取扱商品が当然中煎りから深煎りがメインにならざるを得ないのは当然の結果だと思いますが、その一方,スペシャルティコーヒーの酸の素晴らしさを実感し、感動するコーヒーを我々が提供できていない結果でもあると思います。


スペシャルティコーヒーの素晴らしさを一般消費者の方々に実感し、感動していただくには、素材の原料生豆の質が重要なのは当たり前ですが、それを活かすのも殺すのも焙煎であり、焙煎技術の構築こそがまずもって重要ではないでしょうか。


そして【目次13 顧客教育  、14スペシャルティコーヒー業界の強化課題】には一般消費者に対するスペシャルティコーヒーの啓蒙活動の必要性が強調されているように、僕を含めて多くの読者の方も日々切実に感じている課題です。


しかし、スペシャルテイコーヒーの素晴らしさを再現できる浅煎りの焙煎技術が構築出来ていないがために、コーヒー教室や店頭での啓蒙活動に二の足を踏んでしまい、積極的に活動できない方が多いのではないでしょうか?


自分の焙煎技術の未熟さに引け目を感じていて、店頭販売やコーヒー教室でいつも内心はオドオドしながら販売活動していた自分を思い出します。


上記の(●消費者の焙煎の好みの変化については、浅煎りが増えていると、好みは変わっていないが拮抗している。)ーーというレポート結果の真相は消費者の従来の志向と、一生懸命啓蒙活動をする僕たちの結果の現われだと思います。


何はともあれ、我々ロースターが浅煎りの焙煎が構築出来て、スペシャルティコーヒーの素晴らしさを積極的に伝えることが出来れば、消費はもっと拡大していくと思います。


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 短時間焙煎=通常の焙煎で浅煎りが美味くできないのは、焙煎時間が中煎りや深煎りより短くなって、水抜けが不完全になってしまうためでした。


これを改善するためには、投入量を減量するか、あるいは時間を延長するかで改善できました。


投入量を減量して水抜けが解決した場合は、ブライトでとても印象ある風味特性を出せても、焙煎時間そのものがカップの合成に大きく関与するため、個性が強すぎて真っ当な飲料として飲みづらい面が出てきました。


そして、時間を延長して解決した場合、上記の欠点も解決されより好ましいものになりますが、そもそも短時間焙煎そのものが高温での焙煎処理のため、クリーンやスイートを実現できても、マウスフィールに違和感が出てきてしまう欠点を内包しているという欠点がありました。

このマウスフィールの欠点を解決する方策が模索されて、焙煎の工程を明確に2段階に分け、前半は低い温度で、後半は高い温度で焙煎するノウハウの着想が出てきます。


 



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