究極の低温焙煎 Ⅰ

2023/09/30


ブログの更新が全く途絶えていましたが、これから再開いたします。

この空白の数年間、実は持ち前の低温短時間焙煎ではなく、再度その源流である低温長時間焙煎にのめり込んでいましたが、そのアウトラインが見えてきました。

この低温長時間焙煎は、今世紀の初期に真摯にスペシャルティコーヒーを学んだ方なら、一度はなじみのあった焙煎ノウハウと思ます。

最大の特徴は、焙煎時に窯を温めないで、そのまま投入して焙煎をするという常識を逸脱した、焙煎ノウハウです。

「シリンダーの内側の鉄板を手で触れる」という触れ込みで、当時センセーショナルに伝搬したので、記憶のある方もおられると思います。

「1バッチめは釜を温めずに焙煎を始めるのだから、シリンダーの鉄板は手で触れるのは当たり前だが、2バッチからはどうするんだ!」、、、、、と通常の焙煎に慣れ親しんできた我々にとっては皆目見当のつかないノウハウでした。

また、「投入してからは、ごく弱い火力(低い温度)で水を抜いていき、水が抜けたら一気に火力を上げて、窯の内部温度を上げて成分進化を促進する。」という触れ込みだが、いったいどのくらい時間がかかるのか?ということも全く未知の世界でした。

当時、味方塾で恩師からこの焙煎ノウハウを伝授していただいた時、僕を含めたメンバーは待ってた!ばかりにこのノウハウを実践しました。

しかし、良い成果が全く出ず、ほとんどのメンバーは当時伝搬していた、アメリカのスペシャルティコーヒーロースターの高温短時間焙煎にシフトしていって、このノウハウをまともに研鑽するメンバーは誰一人いなくなりました。

いま、低温長時間焙煎のアウトラインが見えるようになって、この焙煎ノウハウがうまくいかなかった原因や、そこから高温短時間焙煎の必然性や、その長所短所も分かってきました。

釜の余熱を廃し、火力だけで焙煎を進行させるこのノウハウは、投入された豆の状況に合わせて、火力を調整しながら焙煎を進行させていくと、豆の持つ水分の放出状況に合わせた火力の強弱が水抜きの最大ポイントとなることが分かります。

投入された生豆は、ミックスされたクロップか?その暦年経過・硬度などによって、およそ2~4回ほどのピークで水分を放出します。

前半の焙煎の工程において、全体に水が抜けていくのではなく、何回かのピークを繰り返して水が抜けていくということです。

このピークを見逃さず、火力を上げ、ピークが過ぎると、過大になった火力を下げることによって、豆の表面に負荷なく、均一に水分を抜くことが可能となるわけです。

実際、加熱された生豆は、収縮を繰り返し、最終的にシュリンク状態になって、おおよその水分が抜けたことを示すことを、多くの方は認知していると思います。

ともあれ、これから低温長時間焙煎について書いていきます。

 

====当時記録しておこうと書いたものを付記します。

西暦が20世紀から21世紀になって、サードウエーブのうねりがいよいよ本格的に始動し始めていた。

ジョージ・ハウエル氏の提案で開催されたブラジルのコンペティションはCOEへと進展して、僕たちも共同でサマンバイア農園を落札した。

その後、2002年にはブラジルCOEのチャンピオンのアグアリンパを落札、二カラグアのサンルイス、グアテマラのラニダンディア、、、

こうしたオークションの落札で、直接それらの農園やその地域グループとコンタクトができ、ダイレクト輸入が実現していった。

そんなころ、メンバーのSに味方塾の勉強会の順番がやってきて、同じ愛知県内の僕が勉強会の下準備をお手伝いすることになった。

勉強会の前日、勉強会の会場をチェックした後、Sと新幹線の駅に先生をお迎えにった。

時間も遅いので、そのまま恩師が予約したホテルにお送りする予定であったが、恩師のご機嫌が良さそうなので、車中、思い切って僕の思いを恩師に伝えてみた。

「先生、これから本格的に本物のスペシャルティコーヒーが輸入できるわけですが、僕も含めてメンバーの最大の懸念は、それをきちんと焙煎できない限り、そのすばらしさがお客様に伝えることができないのでは!ということです。ほとんどのメンバーが焙煎といまだ格闘している状況です。ましてや浅煎りの焙煎をきちんと焙煎するなんて、まったく出来ないのです。」

おそらく恩師もそうした懸念を十分に承知で、スペシャルティコーヒーの焙煎ノウハウをどう構築していくかは、メンバーのカッピングスキルの構築とともに重要な課題であると認識していたと思う。

多くの世界的なカッパーでも焙煎のノウハウはおそらく疎かったと思う。(というより、焙煎ノウハウそのものが暗中模索状態であったと思う)恩師も素直にそのことを認めていて、変に知ったかぶりしない潔さがかえって、氏のカッパーとしてのプライドを感じた。

それはともあれ、恩師の喫緊の課題はこれから日本のスペシャルティコーヒーを背負って立つリーダーを早く!どう育てるかであって、そのためには彼らのカッピングのスキルの向上と焙煎技術の向上であった。

「じゃあ、今から焙煎してみましょう!」

思ってもみない恩師のお言葉にびっくりして、急遽Sの店に直行した。

何キロ?だったかは記憶がないが、いきなりグアテマラのニュークロップ生豆を投入した。

「先、先生、、窯を温めないのですか?、、、、」と苦慮しつつ、先生の動作に集中する。

先生は少し慌てて、火力を上げた。

どうも、豆の表面温度のボトムを取ろうとしていたと思うが、現時点ではその温度や時間は残念ながら、記憶がない。

その後、どのくらいの時間が経過したのだろう、、、テストスプーンで水抜けを探っていた先生は、「ハイOKです。あとは性分進化させてください」といきなり、僕にバトンタッチした。

慌てふためいた僕は、気を取り戻しつつ火力を上げて、何とか窯出し迄こぎつけた。

3人でカップをしたが、そのクリーンで雑味のないカップは衝撃的だった。国産のフジでも十分に焙煎出来ることが、それ以上の衝撃だった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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