SCAJカンファレンス 2010 Ⅰ

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東京のビッグサイトで、去る9月22日から
24日までの3日間、SCAJのカンファレンス
が開催された。

JBCの準決勝、決勝や生産国セミナー、そ
してローストマスターズチャンピオンシップ
などのイベントも行われ、多くの来場者で、
盛況だった。

従来の業界関係者だけではなく、若い人の
来場も目立ち、あらためてバリスタブーム
の大きさを認識した。

若い人が多いと、会場は活気に包まれ、明
るくなる。

味方塾も、今年もブースを出店し、自前のスペシャルティコーヒーを、お客様に味わっていただい
た。

今回は、メンバーが提出した豆を、朝イチでブラインドでカッピングをして、点数の高いものをえら
び、その日の提供コーヒーを決めた。

メンバーといえども容赦はない。P10204021_4

本当に"美味しい”!と実感し、お客様が
感動するコーヒーを提供できないと、この
スペシャルティコーヒーの世界では生き
残れない。

最近、このことが実感として、ひしひしと
感じる。

自分の店で、お客様に試飲を提供してい
て最近感じるのは、フレバープロファイル
がしっかり
と表現できたコーヒーには、お
客様は本当に驚きをもって、感動を表現
してくれることだ。

「このエチオピアのフレバーはフローラル
といって、花の香りがしますよ。」
僕の説明と、お客様の舌の実感が一致
すると、感動はよりリアルになる。

「あ~ほんとうだ。花の香りだ!凄いコーヒーですね。」

スペシャルティコーヒーの凄いところはここにあり、一定のフレバープロファイルを達成することが
最も重要なポイントとなると思う。

そして勿論、アシディティや甘さやマウスフィール、アフターの余韻などの全ての特徴のバラン
スがとれていることも、必須だ。

しかし、このフレバープロファイルは、焙煎温度や焙煎時間の数秒、コンマ数度違っただけで、
何処かにいってしまったように、隠れてしまう。

こうなってしまうと、お客様の反応も、いまいちさえない。
これでは、どうってないプレミアムと同じだ。

また、フレバープロファイルを達成できたとしても、マウスフィールがざらついたり、アフターが刺
激的で悪い場合、やはりお客様の反応は、すこぶる鈍い。

ごく普通の若いお母さんたちや、年配のおばちゃんたちも、この差をはっきりと認識する。

このように、焙煎が上手くいかなかったコーヒーは誤魔化しがきかない。

スペシャルティコーヒーが恐いのは、実はここにある。

スペシャルティコーヒーの凄さと恐さは紙一重と思う。

P10204051_3 また、焙煎技術がクリアーできたとしても、
原材料の調達、確保も、今後大きな問題
となってくる。

今回も多くの生産国や輸出・輸入商社が
ブースを出店して盛況だった。

僕たちがスペシャルティを志して、勉強を
始めた頃、ITCグルメコーヒープロジェクト
の一環として行われた、ブラジルでのコン
ぺティション(COEの初回)第一位のロット
は$2.65/lbという今では考えれない、安
い価格で落札された。

それからわずか10年余りでの落札価格や
入札者数の上昇を見れば、スペシャルティコーヒー市場の急成長ぶりがわかる。

日本の商社やロースターの落札が多くなるが、これを先行指標と見れば、日本のコーヒー消費
市場における、スペシャルティコーヒーのシェアも確実に増大してくと思う。

アメリカの膨大なコーヒー市場は量ベースで全体の4割、価格ベースで全体の2/3がスペシャル
ティコーヒーがしめるといわれ、
スペシャルティコーヒーが主役になる時代も、もうすぐだろう。

これは、SCAAがスペシャルティコーヒーの範疇を、“High Commercial Coffee”や“High Qual
ity Coffee”をも含めているためだが、
大手のクラフトやネッスル、ファーストフーズのマクドナ
ルドやダンキンドーナツ、流通のウォールマートなどが次々に、こうした高品質コーヒーを取り扱
いだし、スペシャルティコーヒーのシュアを押し上げていると聞く。

P10204081 また従前のインテリゲンシャやスタンプタ
ウンなどのスペシャルティーコーヒーロ
ースターに加え、中小のロースターもス
ペシャルティコーヒーに特化して業績を
上げていることも、市場を押し上げ
てい
るという。

こうして、欧米の高品質コーヒー市場(ス
ペシャルティコーヒー市場)が拡大した結
果、世界的にトップスペシャルティは勿論
、裾野の高品質コーヒーの供給可能量
が絶対的に不足する自体になってきて
いる。

短期的には価格の上昇を招くが、品質を
維持しながら、生産を拡大する方策が模
索され、生産量が拡大していくことが望ま
れる。

スペシャルティコーヒーがもたらした、消費国と生産国の連携は、知られざる産地の可能性を見
つけ出し、栽培方法の改良や、生産効率の向上をもたらした。今後の供給量不足の解消は、こ
の連携を持続することの試金石になりそうだ。

アメリカで勃興したコーヒールネッサンスは、消費市場を復興させ、生産国に生産需要をもたらし
、両市場の雇用を創出する。

政治決着であった円高容認後から、じわりじわりと着実に進行した、日本の国内産業の空洞化
は、特に若い世代に犠牲を強いた結果となった。まともな就職先は、限られた者にしかなく、多
くはとりあえずと、腰掛さきを探し、とうざをしのぐ。

P10204211 そんな状況にあって、この会場に集ま
った多くの若者たちに、希望と自尊をも
たらす仕事を、創出したのもスペシャル
ティコーヒーだ

エスプレッソとフォームドミルクを合わせ
たラテは、アメリカの若者たちに受け入
れられ、カフェブームに火をつけた。

バリスタはステータスある職業として、
尊敬され、憧れとなった。

JBCの会場で、憧れの選手のシグニチ
ャーのレシピを、一生懸命メモする女の
子が沢山いた。

熱気溢れる、JBCの会場の若者たちに
エールを送りたい。

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        2010のジャパンバリスタチャンピオンは丸山珈琲の鈴木 樹さんに決定しました。
        おめでとうございます。世界大会はコロンビアで、初の産出国開催です
        ご健闘をお祈りいたします。

ローストマスターズチャンピオンシップ2010 Ⅱ

P10201661 2回目の会合が、9月15日に前回と同じ豆蔵さん
で行われた。

ルワンダの残量は10kg弱程で、4回の焙煎チャ
ンスになる。

前回での検証結果から

①8分以内に一ハゼを迎える。

②一ハゼからラストまで適正時間と終了温度
再検証する。

というのが今回の課題であった。

そもそも、焙煎の課題は①の水抜きと②の進化のバランスにあると思う。最適なバランスを探し出す作業は膨大な時間と、忍耐を必要とする。


焙煎がとても難しく、辛い作業となってしまうのはこのためだ。

今回はオーナーの柴田さんも気合が入っているようで、前回から今回までの間に、
課題である一ハゼからラストまでの時間、最終温度の検証をとっていてくれいた。

*投入から8分以内に一ハゼを迎えることによって、以前よりグッとクリーンになったこと。

*一ハゼから終了までは2分30秒前後で215~6度がバランスが良い。

という素晴らしい検証結果を出していてくれた。P10202971

柴田さんもこの結果には満足していて、 焙煎の
醍醐味や面白さを感じたようだ。

早速、お店の4種のシングルオリジンをカップさ
せていただい
て、その向上結果に感心した。

フレバー、スイート、マウスフィール、アフターが
共に向上している。


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柴田さんの検証結果の大きな収穫は、最終温度
を213度ではなく、215~6
度のポイントを発見
したことであ
る。

前回、全てのカップが、スイートが足らない傾向や、終了時間を3分台に延ばすと暗くなる傾向に苦慮
していた
が、時間と温度のピンポイントが明確になった。

一ハゼから2分30秒で215度の焙煎グラフのラインが見えてくる。

だが、それでもまだ疑問は残る。

自分や友人の焙煎機では、一ハゼから終了までが2分台ではマウスフィールやアフターが良くないこ
とや、
3分台でようやく全体がまとまってくる検証結果がある。

このことを考慮に入れて、前回は3~4分台を検証したが、レスクリーンで暗い結果となってしまっていた。

なぜ2分台でOKなのか?

疑問は尽きないが、ここはとりあえず、現実のカップの結果をうけいらなければならない。

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P10203831 残された4回のチャンスにかける。

一回目:浜松の羽田さんが挑戦。

店舗を改装して、最新のプロバットを導入したば
かりで、
試運転やら新装開店でお忙しいところ
を参
加してくた。

投入からガス圧を一定にして、徐々にペースを
上げていく。

スローテンポに、8分台にハゼが来るかハラハ
ラしてくる。

「ポンさん、ちょっと遅いかな。このままだと後れるかも・・・」

しかし彼の自信に満ちた目線はガス圧を上げるタイミングを探る。

老婆心は杞憂に終わる。

8分25秒、堂々と一ハゼが始まる。

しかし、6分頃の大幅な火力アップ(この時点で水抜が完了と判断したと思う。)は、ハゼ後の急激な進行の下地を作る。

ハゼの手前で火力を落としているが、ハゼに気迫を感じ、嫌な予感がする。

火力を少しづつ落として、215度で落とす。1分25秒!


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2回目:柴田さんが挑戦。P10203821

一ハゼはジャスト8分。しかし1ハゼから火力を
抑えすぎて、失速。

1ハゼからガスを消して、余熱で進行させた。

この方法は過激だが、そうでもしないと2分30
秒はとても
維持できない。

釜の余熱で進行させて行くが、室温や釜の蓄熱
が低すぎる
予想以上にペースが落ちる

失速を予見して火力をあげようにも、着火するま
でかなりのタイムラグがあるから、対応が遅い
と、このように失
してしまう。


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P10203841 3回目:静岡の某氏が参戦。

1回目のポンさんより、よりスローぺースで進行
する。

少しづつ火力をあげながら、ペースを維持
するが、遅れ気味
になってくる。

9分15秒でハゼが始まる。

ハゼからは徐々に火力を落とし、ラストは火を
消し、約2分30
秒、225度で終了。

2ハゼが大きく始まっている。時間や温度はこ
となるが、前半の緩やかな上昇と、後半の急な上昇はポンさんの焙煎と共通する。


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4回目:再度柴田さんが挑戦P10201851

ラストの釜となってしまった。1ロットも目標の温度
展開ができ
ていないことに焦ってくる。

最後のチャンスとあって、皆気を引き締めて、焙煎に集中する。

ストップウォッチと進行表を眺めながら、進行状
況を柴田さん
に伝える。

8分12秒で1ハゼを迎え、2分30秒ジャストで215度!

最後の最後で、目標を達成!上手くローストラインに乗っけてくれた柴田さんに感謝し、安堵する。


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このようにして、一応焙煎は全量終了したが、カップ結果は想に反して、
意外な結果となる。

焙煎に対して、思い込みが大きいほど、意外なカップの結果に戸惑いは大きい。

今回もそのことを思い知らされた。

一通りのカッピングの後、各メンバーのコメントをいただいて、気に入ったカップを挙げてもらった。

1:シトラス、カシス、フローラル、ブライト、明るく、フレバー好印象、マウスフィールやや硬い、

3:オレンジ、ミルクチョコ、ラウンド、深煎りだけどいい。

4:ライブラリー、カシス、シルキー、滑らかさ、マウスフィール良い、冷めるとレスクリーン。

2,5はそれぞれ、温度の過不足の欠点がでて、候補に挙らない。

1がダントツの人気で5人、4が2人という結果になる。P10109311

1ハゼまでのもって行き方で、水ぬけの良し
悪しが決定
されることは、今回も確認でき
たが、

1ハゼから終了までのローステイングポイン
トは、今回に
至って全く解らなくなってしまっ
た。

4が狙ったとうりのポイントをつくことができ、
カップも狙いどうりの結果が出ていたが、
冷めるにしたがって、暗くなり、レスクリー
ンになってい
く。


1は1分25秒という短さにいささか懸念を持っていたが、思いのほかカップはよかった。

自ら構築してきた焙煎理論がもろくも崩れだす。

温度と時間は一定の連関がありそうで、実はないのかもしれない。

水がキッチリと抜けていれば、後はバランスさえ整っていればOKなのか?

今回、焙煎した5つのサンプルを、各自持ち帰っていただき、2~3日後の変化を確認していただくこと

した。

その上で、今回の提出品を決定することにした。


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P10202421 翌日、と3日後、カップをとった。

思ったとおり、カップが変化している。

1は当日にあった、刺激的なマウスフィールの荒さが

とれ、落ち着いてきている。

その分、スイートがあがってきていて、明るさと、フレ

バーの印象も落ちることもなく持続している。

4は残念だが、滑らかさがなくなり、平坦で、暗く、レ

スクリーンに変化していた。

フレバーまで弱々しくなり、失望感がつのってくる。

目の前のカップの結果だけが事実を物語る。

この結果を受け入れ、どう自分の理論と、矛盾なく結論付けるか?思案する。

この暗さは、おそらく火力の問題であろう。

温度表示も豆の表面温度だけではなく、上から注ぎ込んでくる熱風の影響もありそうだ。

火力を落とした場合、火力をあげた場合、、、、、。

思案は尽きない。

メールでメンバーの結果を確認して、提出を1と決定する。

柴田さんに本部への発送をお願いして、

ビールでささやかな完了の祝杯をあげた。