ジョージ・ハウエルからのアンチテーゼ (テロワールの真髄)

P10204781_2 今年の新米が届いた。

同じ町内の、御年90歳近くのご夫婦が手塩にかけたもので、ご夫婦のお孫さんのよしみで購入させて頂いた。

あまりの美味しさに驚いた。

家内のいい加減な米砥ぎと、ちょっと旧式な炊飯器にもかかわらず、圧倒的な光り輝く艶と香り、粘りと甘さ、そして一瞬に消えていくアフターのよさは筆舌に尽くしがたい。

昨日家内の実家から頂いた,なすやきゅうりの一夜漬けと、かぼちゃの味噌汁で、あっという間に3善が腹に収まってしまった。

米と野菜が絶妙に、お互いに相手を引きたさせる。

天賦の恵みに思わず感謝する。

この新米はご夫婦曰く・・・あたり前の作業を淡々とこなしただけ。・・・と謙遜なさっていたが、昔からの手順を、じつに丁寧に踏んだものだった。

そもそも、自分たちと娘家族が食べる分を確保して、余剰のものを売るという状況だからこそ、こうした米作りが可能である。農産物として販売目的であれば、生産効率が優先され、昔ながらの作業工程は省かれる。

その工程の最終作業段階での極めつけは、刈り取った稲穂を、木製の物干しにかけて天日干しにする“はざ架け(稲架)”だ。

刈り取られた稲穂はまだ数日は生きているといわれる。そして架けられた稲は葉や茎から養分を米粒に送り続ける。

生産効率からいっきにコンバインで脱穀して、電気乾燥され、サイロに貯蔵されたものより格段に旨い。

米の収穫・精製工程はコーヒーと比較すれば、多くの類似点が有ると思う。

例えば、はざ架けはコーヒーのアフリカンベッドと同じだ。

パーチメントを乾燥させる工程で、コーヒーの品質向上に飛躍的に寄与したのはアフリカンベッドであったといわれる。ウオッシュドだけでなく、ナチュラルやパルプドナチュラルにも適応され、やはり品質の向上に大きく寄与している。

洋の東西を問わず、作り手たちのきめ細かな配慮が、同じような処理工程にたどりついた。

天賦の恵は、受け取る我々の姿勢しだいで、多くもなり少なくもなるということかもしれない。

***************************************

P10207111_2

昨日はローストマスターズ中部チームの打ち合わせが岡崎であったが、その帰路、同乗のSさんの店舗にお邪魔した。

丁度、これからカッピングということで、僕も参加させていただいた。

農園の同じロットを今日焙煎したものと数日前の焙煎したものを比較する。

今日は中点を変化させ、仕上げも温度を高めにして、これからの秋バージョンを試したということであった。

仕上げの進行は適正でないと、カップが歪む。

仕上げの温度が高めだった結果、やはりマウスフィールが悪くなっている。

それらのカッピンググラスの他に、数種のカッピンググラスが有った。液体の色がやや淡く薄い。もしかしたら、これが車中で聞いていたジョージ・ハウエルのコーヒーか?

「それがジョージ・ハウエルのコーヒーです。コスタリカとグアテマラ・・・・・」僕の目線を感じたSさんが、素早く反応した。

息を凝らし、カッピングスプーンに液体を満たす。

そっと口の注ぐ。

もう冷めていて、フレーバーの特性を捉えにくいため、強く吸い込まないことを意識して、口に注いだのはない。無意識のうちに、甘さととか、マウスフィール、ストラクチャ―、アフターを求めていた。

酸を包み込む甘さが舌に滑らかに絡む、フレバーが鼻腔にゆっくりと抜けていく。そして心地よい甘さでフィニッシュする。

以前、恩師が最近のジョージ・ハウエルのコーヒーを絶賛していたことを思い出す。

Sさんのコーヒーはもちろん、11分ちょいの短時間焙煎であり、完成度はそれなりに高いと思う。

ジョージ・ハウエルの焙煎はどうか?

カップから短時間焙煎とは全く次元が異なることが伝わってくる。

両者のカップを繰り返す。

そうだ。そうなんだ!
やっぱりいいんだ!これでいいんだ!

これは、まさに自分が毎朝のカッピングで経験していることではないか。

「短時間焙煎」か、「恩師のメソド」かの結論がいまだ出せず、どちらの方法も繰り返し焙煎しているため、毎朝のカッピングはどちらか一方だけのカッピングはまれで、両者を必然的に比較する結果になっている。

多くの仲間が「恩師のメソド」から、「短時間焙煎」に傾倒している中、自分だけが「恩師のメソド」にこだわり続けるのを、はっきりとカッピング用語で、仲間たちに主張することが出来ないもどかしさがあった。

自分の「恩師のメソド」によるコーヒーは、ジョージ・ハウエルのと大枠で似ているのではないか!
もちろん、洗練されたクリーンさ、酸・甘さ・テロワールの表現には、まだまだ劣るが、ニュアンスは一緒なのだ。

―酸を包み込む甘さが重層的で、ボディを実感する―

比較を繰り返すと、はっきり短時間焙煎の欠点が見えてくる。

酸、甘さ、滑らかさ、の立体的な表現において、短時間焙煎は明らかに落ちる。単にフラットで、ストラクチャにかけるのだ。

短時間焙煎のフラットが単にクリーンを強調しているだけのこと、そしてテロワールを正しく表現していないことを、ジョージ・ハウエルのコーヒーは雄弁に語りかけてくる。

*************************************

フラットとドライが同義語ならば、まさにビールや酒、焼酎、ワイン、ウイスキーなどのアルコール飲料において、ドライとうたったものはほとんどフラットと表現してもいいと思う。

クリーンでスカッとしていても、盃を重ねるごとにすぐにあきがくる。それらはそれぞれの分野での本分を極めているのではなく、技術的に妥協しているに過ぎない。

消費者がそれを求めているならば、それはそれとしてプロダクツとしての意義はあると思うが、スペシャルティコーヒーはそれでいいのだろうか?

―テロワールの真髄を真正面から表現するとこうなんだよ―とジョージ・ハウエルからのアンチテーゼが突きつけられた感じがした。

そして、僕の背中をグッと押してくれた。

短時間焙煎の季節対応

P10207321_2 短時間焙煎は圧倒的な熱量を手に入れることによって可能となった。

直火、半熱風、熱風という形式の進展は、熱量の増大という意識もあったが、生産の大規模化と熱効率の要望からであった。

熱量の増大が強く認識されるようになるのは、個々のロースターによって、焙煎ノウハウを構築していく過程においてである。

個々のロースターの要望にメーカー側もそれに対応して、ガス容量やバーナーの増設が行われた。

我々も、これらの過程や投入量の少量化などで対応しながら、短時間焙煎のノウハウを構築してきた。

そしてまた、それをより精緻なものにするためには、日本の四季に応じた新たな対応の必要性が認識されるに至った。

***********************************

短時間焙煎は時間の呪縛からは逃れられない。時間の呪縛から開放されれば、それはもはや短時間焙煎の意味を失ってしまう。

時間を固定して、四季の移り変わりによる水抜けの変化に対応するにはどうすれば良いか?

時間を変数としないならば、火力の調整か、投入量の調整による対応しかない。

投入量を固定すれば、ただ1つ火力の調整しかないことは明らかである。

しかし、火力の変化は、固定したい時間が動いてしまうという厄介な問題が絡む。

火力の調整が時間に影響させないトリックがここにおいて必要になる。

そのヒントは多くの事例にあった。

例えば、ブラジルは他の豆に比べ、ペースが後手に回ってペースダウンしたり、ファーストクラックが遅かったりする。豆が熱を取り込むのが遅いのか、後手に回りやすい。

火力をもっと与えてやれば、水抜けはもっとスムースになるだろうという発想だが、単なる火力のアップは結果として、水抜けまでの時間が短くなってしまい、水抜けがいっそう悪くなってしまう。

この場合、中点を少し落として火力をアップさせるのがポイントで、そうすることで水抜けやファーストクラックの通過時間を通常の焙煎と一致させ、トータルの焙煎時間を一致させることが出来る。

また、「恩師のメソド」の焙煎において、日によって微妙に水抜けが変化して、カップが上手くまとまらないため、14分という時間は動かさずに、豆温の中点だけ少し落として、その分最初から火力を少しあげて対応していた。また、水が抜けすぎているときは、中点を上げていた。

これらは中点を動かすことによって、火力を変動させながら、時間を固定することを想定している。これを応用すれば、時間を動かさずに、火力をあげることができ、カップは改善されることはわかっていた。

しかし、短時間焙煎で中点を数度引き下げても、時間内につじつまを合わせるには、相当な火力が必要だから、果たしてそれだけの火力があるか不安だった。

しかし、結果は杞憂であった。

**********************************

P10207331

具体的な数値で説明する。

標準的な焙煎時間11~12分前後の短時間焙煎は、投入温度と火力の調整によって、豆温102℃の中点(ボトム)で折り返すとする。

そして、8~9分にファーストクラックをむかえ、11~12分前後で目標の豆温度にいたって終了すると仮定する。

実際の焙煎は、そのときの状況の変化で、中点温度や上昇速度が微妙にずれるが、火力を調整して、ファーストクラックの8~9分・終了の11~12分のポイント点をトレースできれば良い。

完璧にこの進行をトレースできていても、カップをとって水抜けの悪い結果が出たら、いよいよ中点を落として、火力をアップして、この進行をトレースする。

焙煎の中点(豆温)を102℃から97℃に落としてみる。

通常より5℃の落ち込みは、想像以上の大きな温度差で、この状態からペースを取り戻そうとすると、最初からかなりの火力が必要とされる。

最初の3~4分は通常の経過より後手に回るが、火力をアップしているから、その後、豆温と排気温のつじつまをあわせるようにコントロールすれば、8~9分前後でファーストクラックを迎えることが可能となる。

―――102℃の中点のとき、ガス圧がほぼ目一杯な状態で、短時間焙煎が可能だったとしたら、97℃の中点からの短時間焙煎は不可能となる。投入量を減らすか、ガス圧要量を増やすか、バーナーの増設が必要となる。―――

97℃の中点のカップ結果がまだ悪ければ、更に中点を引き下げ、火力をあげる。

そして、カップがよければ、その中点がこの時期に適した中点ということになる。

******************************

P10207371 過去において、何度も短時間焙煎を試みて、失敗した原因は熱量にあった。(投入量も規定量の6~7割であったから、もっと思い切った少量の投入を試みていれば、成功したバッチもあったと思う。)

失敗から学んで、ハードの熱源を改良し、熱量を増やすことで、短時間焙煎は可能となった。

そして、季節が変化して、この時期に及んで、更なる改善はやはり熱量にあった。

トータルの焙煎時間は変化させず、熱量を増やすことで水抜きに対応する。かつ熱量の増大が及ぼす時間の短縮を避けるため、中点を落とす。

圧倒的な熱量は、中点を落とすことで余裕を持って確保されたファーストクラックまでの時間内に、芯に残る豆の水分を吹き飛ばす。

季節による変化は、時間を固定して、熱量で水抜けの量をコントロールする。

一方の恩師のメソドは、トータルの時間にはとらわれずに、時間を延長することで水抜きに対応する。かつ熱量は変えず、時間を延長させるためには中点を下げる。

時間から開放された熱量は、時間を延長して、芯に残る豆の水分を抜く。

季節の変化は、熱量を変化させず、時間で水抜けの量をコントロールする。

*****************************************

賢明な読者諸兄はもうすでにお分かりいただけたと思う。

どちらの焙煎方法も、水抜けまで(ファーストクラックまでとしてみても同じ)のトータルとしての熱量は増大している。

【短時間焙煎】は水抜きまでの時間は変化しないが、火力のアップ分、トータル熱量は増大している。

【恩師のメソド】は火力は変化しないが、時間の増加分、トータル熱量は増大している。

水が抜けにくくなったら、トータル熱量を増やす。

こんな単純明快な結論が導き出せたのは、中点を変化させるというトリックがあるからだ。

●中点を落とすことによって、短時間焙煎の火力アップは、時間が変更されずに、トータル熱量を増やす。

中点を固定すれば、火力アップによって時間が短縮されトータル熱量は変わりない。結果、時間の短縮による酸量の増大と、水抜けの未改善は、カップの印象度をより落とし、単純な火力のアップは、失敗に帰す。

●中点を落とすことによって、恩師のメソドの時間延長は、火力を変更させずに、トータル熱量を増やす。

中点を固定すれば、時間の延長は、火力を落とさなければならない結果、トータル熱量は変わらない。結果、酸量の減少と水抜けの未改善で、単純な時間の延長は、やはり失敗に帰す。

******************************************

時間軸と温度軸の焙煎グラフは、焙煎の工程を鳥瞰することができて、とても便利だ。便利だから、いつの間にか思考過程にグラフがしっかりと入り込み、焙煎の変化をこのグラフのシフトで理解する。

頭の中で、自在にシフトできるようになると、論理的に焙煎が理解できたと思うが、それは大変な錯覚である。

焙煎グラフは、他人の焙煎をコピーするには便利だが、目の前のカップの問題を解決するツールとしては心もとない。焙煎グラフの時間×温度の面積は熱量を表すものではない。

目の前のカップの問題解決は、「トータル熱量は?」という視点から見れば、解決の糸口がすぐに見つかるのではないだろうか?

この季節、水抜けが悪いカップになれば、もっとトータルとしての熱量を増やせばいい。

焙煎工程にトリックを組み入れて、トータルの熱量を増やせば、水抜けはほぼ解決すると思う。水が抜けすぎていれば、元に戻す。

しかし、このトリックが短時間焙煎の季節変動に対応仕切れているかどうかは、もう少し検証が必要と思う。

「恩師のメソド」もやはり、酸量の減少という欠点を内包しているため、新たな改善策が求められる。

読者諸兄のご意見も参照して、新たな展開があれば報告したい。

恩師のメソド

P10207141 前々回からのブログから、急激にアクセス数が増えた。

メールで具体的な焙煎工程における質問もあり、反響の多さにとても驚いている。

カフェブームの裾野の大きさに思い至ると共に、焙煎に真摯に取り組み、悪戦苦闘している多くの仲間の存在を実感した。

そして、焙煎の迷路にはまりこんで、切実に「今日、どう焙煎したらいいか!」と焙煎に苦しみ、悩む過去の僕を思い出した。

喫茶の営業が主体だった当事、朝のカッピングで、出来の悪いコーヒーばかりだった時は、店にいることが出来ず、閉店にしてしまったことさえあった。

要領が悪く、頑固な自分の性格もあるが、ずいぶんと無駄な時間を費やしていたと思う。要領のいい仲間たちは、焙煎にこだわる時間に、着々と販路を拡大していた。

豆が売れなければ、焙煎に思い悩んだ膨大な時間は単なる徒労に過ぎない。

それは事実であるが、しかしそれでも、焙煎を日課とし、拘り続けているのはなぜだろう?

その答えを、こころの奥深くで、気付き始めていた。

徒労が単なる徒労ではなく、必然で、意義ある徒労であることは何を意味するのか?

僕の心の中に存在するほんとうの自分が、その意味に気づいた時、僕の役割がはっきりと分かった。

*******************************

メールで質問があった「恩師のメソド」の前半の水抜き工程を具体的に説明する。

このメソドの本意は、水抜き工程において、釜の内部温度を悪戯に上げないようにして、豆の芯に残りやすい水を丁寧に抜くことをめざしている。

釜を加熱しないまま投入したり、投入時はガス圧を絞ってごく弱火から徐々にガス圧を上げてみたり、ガス圧を一定にしてみたりと様々なやり方を試みがなされ、試行錯誤がなされた。

ようは水抜けを確認しながら――具体的には豆の表面温度と豆の表面状態、そして臭気で水の抜け具合を確認しながら――焙煎を徐々に進行させ、水が抜けたら釜の内部温度をいっきに引き上げることが、この焙煎のポイントである。

豆の表面温度、豆の表面状態、臭気は、まだ共通した認識にはいたっていないと思うが、僕が検証して確認した状態は

●豆の表面温度が166℃~168℃前後

●豆の表面状態はいわゆる“シュリンク状態”、最小限に縮小した段階

●臭気は“水気”がなくなる状態

である。そしてこの3項目が一致することがポイントで、一つの項目でもかけていることは、投入からその時点までの工程にどこか問題があることを示唆していると思う。

以上のことから、このメソドはだらだらと低い温度で、水抜き工程を長時間続けてしまう傾向がある為、このメソドの真価が理解されずに至っている。

低いとか高い、短いとか長い、という表現は相対的であり、それぞれの言葉が独り歩きしてしまうと、かえって焙煎の実態を見誤ってしまう。

短時間焙煎の水抜きが7分である場合、それをせいぜい2~3分延長しても、9~10分の水抜き工程となり、トータルとして焙煎時間は長くなる。

私見では、酸量の逓減を鑑みれば、このくらいが、常識的な範囲であると思う。

時間延長と酸のボリュームは相反するが、水抜けを優先して、水が抜けが悪くなった季節に、「恩師のメソド」を取り入れて、短時間焙煎をどのくらいの時間延長すれば、水抜けが良くなるかを、検証をした。

正攻法ではないが、この検証によって、「恩師のメソド」のノウハウが垣間見えると思った。

************************************

P10207201_2 時間延長するにあたって、留意しなければならないのは、火力を落として時間を延長するのではなく、火力は落とさずに(ほぼ同じ火力操作)、中点を下げて時間を延長すること。(その根拠は次回に述べる)

また、中点は豆温ではなく排気温で操作する。(この根拠もあらたに別の機会で述べる。)

水が抜けやすかった時期の短時間焙煎―排気温の中点が165℃で、水抜けポイントが7分。ファーストクラックが8分半で、11分で終了―を基準にして、

①排気温の中点を160℃に落とす。前回と同じような火力操作をしていくと、水抜けポイントが8分で、ファーストクラックが9分30秒、終了は12分となる。

②さらに排気温の中点を155℃に落とし、同じ操作をすれば、水抜けポイントが9分で、ファーストクラックが10分40秒、終了が13分。

③これをさらに、排気温の中点を150度に落とせば、水抜きポイントが10分、ファーストクラックが11分45秒、終了が14分。

以下、④145℃・11分・12分50秒・15分  ⑤140℃・12分・14分・16分

梅雨の時期が予感される時から、梅雨に入り、そして本格化するまでの期間に上記の検証を繰り返した。

その結果、③の過程がベストな水抜けであった。また、①②も移行期間中に有効であることを確認した。

③の14分焙煎は上手くまとまっているが、短時間焙煎の酸のボリュームがもたらす活き活きとした派手さには少し劣る。Dryのあの周囲を圧倒的するフレバーの存在感もやや薄れる。

しかし、派手さがない朴訥なところを、可とするか不可とするかは好みもあるが、甘さと滑らかさが舌に、しっとりと絡み、咽喉から鼻腔に抜けていくフレバーが余韻を残しながら、甘さでフィニッシュするアフターの表現においては、最初の派手なインパクトがない分、より魅了される。

プレスで抽出温度をキッチリと守って淹れて、人肌まで冷ませば、その特徴を最大に引き出せる。

*******************************************

そして、③の14分焙煎を繰り返していると、日によって水抜けが悪かったり、抜けすぎているカップが出てくる。

良いことは良いが、微妙に欠点が見え隠れして、味がまとまらない悔しさがある。

この状況で、なぜか再び時間を長くしたり、短くしたりすると水抜きは失敗するので、14分焙煎の範囲以内で、微妙な水抜けの変化に対応してみた。

水抜けが悪かった場合、今度は豆温の中点を落として、かつ他の条件を同じにすると、問題が解決し、クリーンがグッとひきたつ。

具体的には、150℃に排気温の中点をとりながら、いままで豆温の中点が96℃だった場合、排気温の中点は150℃そのままにして、豆温の中点を93℃まで落とす。(調整は難しそうだが、釜の加熱方法とダンパー調整で出来る。)

後は同じ時間に、同じポイントを通過するように、今度は火力を調整する。

調整前のカップから見違えるように改善される。

最適の14分焙煎でも、その日の微妙な状況の変化で、水の抜け具合が変わってくるので、このような対応が必要になる。

この日々の微妙な変化に対応する検証は、かねてからの懸案であった短時間焙煎の水抜きの改善に、応用出来ると思った。

時間を変更できないから、これしかないのはわかっていたが、4~5度落としたとしても、果たして火力が足りるかどうか不安であった。

圧倒的な火力を必要とする短時間焙煎だから・・・・