ローストマスターズチャンピオンシップ 2011 Ⅱ

P10208001 ローストマスターズ本番の9月30日は公務と重なって参加できなかった。

最終ミーテイングのあった20日以降も、公務があり、タイトな時間をぬって、プレゼンテーション用のパワーポイントデータの構成と文面を急いで作り、編集をお願いしていたSコーヒーのTさんに送った。

Tさんも委員のタイトな時間の中で、26日までの提出期日に間に合わせてくださった。

プレンゼンの構成の段階で、今回のお題目のインドについてのカップ評価をどう表現すれば良いか戸惑った。しかし、カッピングの評価はあくまでも事実を客観的に評価し、それにどう対応・善処すべきかに焙煎の意義があるわけで、そもそもそのこと自体がローストマスターズの目的であると思う。

とりわけ、スペシャルティコーヒーの範疇が拡大して、ハイコマーシャル・プレミアムの品質であっても、各種のサスティナブル認証コーヒーであれば、その範疇に含まれる状況になりつつある現状では、焙煎による対応がますます重要になる。

以上の観点から、カッピングの評価と焙煎の対応をそのまま述べることにした。

********************************************

当日は区議会の仕事も手に付かなかった。昼過ぎにリーダーのSさんに連絡をして、準備の状況やプレゼンの進行の確認をしたが、妙にSさんの明るい対応が気になった。雰囲気が良い状況と安堵して、健闘と結果の報告をお願いして仕事に戻った。

その日は彼からの連絡がないまま過ぎた。良い結果ではなかったのだと、勝手に判断して、連絡を取るのも控えた。

そして、翌日のSCAJのサイトを開いてびっくりした。

なんと、Sさんの実弟の大島さんが、午前中に開催されたJCTCでチャンピオンになっているのではないか!

前日の昼過ぎに連絡を取ったときの、彼の妙に明るい対応がここに来て分かったし、僕との結果報告の約束も完全に吹っ飛んでしまっていることが理解できた。

Rmc2011

当日の結果もこれまたびっくりする結果だった。

一般審査部門で1位で、招待審査員部門で6位。

やはり深すぎた。カッパー全員の評価がオーバーロースト。カップ評価以前の問題で、ポジテイブな項目をあえて言うならば・・・・といった感じだ。

それが、一般審査で26票も頂いたのはなぜだろうか?飲料としての印象と、カップの評価とはいささか違うという経験が多々あるが、今回もそのパターンだった。

単に深い焙煎で素人受けがよかったと判断してしまえばそれまでだが、店頭で自分のカップ評価とお客様の評価が食い違うこともよくあり、そこにはなにかパターンが有ると感じていた。

パターンを整理すると、1ハゼの終了前の浅煎りとか、2ハゼのピーク以上の深煎りは、水抜けとドライディスティレーションが出来ていれば、お客様の反応は良い。両者ともフレバーの特性が伝わりやすいからだと思う。

その両者の中間域の2ハゼ前後の煎り止めは、フレバーの特性が伝わりにくく、インパクトが薄い。

焙煎をする当事者の我々は、とかくこの無難な領域におさめる傾向があるのは、浅煎りや深煎り領域をキッチリと焙煎することは難しく、いつもネガティブな面ばかりが目立ってしまうからだ。

浅煎りも、深煎りも水抜けが悪かったり、未発達だったりすると、欠点がはっきりと分かり、お客様の反応も悪いから、どうしても無難な領域に逃げてしまうことは、継続した営業を考えると無理もない。

現状はこの有り様だが、何時かはキッチリと浅煎りを仕上げて、お客様を感動させたい!と思いながら、無難な領域で当座をしのいでいるのである。

多くの仲間が、こんな状況から脱却し、積極に浅煎りに取り組むようになったのは、短時間焙煎のノウハウが分かりかけてきた頃からだった。

中型、大型のプロバットに半量を投入すれば、浅煎りを商品ラインのメインにすることが可能となった。

しかし、そうなっても、焙煎の悩みは何時も絶えないのはなぜか・・・

短時間焙煎の限界を悟るより、己の未熟さを悟り、焙煎に精進することでしかないのだろうか・・・

***************************************

数日後に、本部から各チームの焙煎データとカップ評価の一覧がメールで送られてきた。

そこには、自分が感じている以上に、流れの転換が芽生えていた。

ローストマスターズチャンピオンシップ 2011

P10207871 ジョージ・ハウエルのコーヒーの衝撃が冷めやらぬ9月20日。ローストマスターズチャンピオンシップ・中部チームの2回目のミーティングが、前回と同じく豆蔵さんで行われた。

今年のお題目のコーヒーはインドであるが、前回9月6日のミーティングの時、送られてきた生豆を手にとって、見た瞬間抱いた懸念は、ロースト後のカッピングで、すぐに結果が現れた。グラッシー、ウッディーだ。

今回は、素材の酸の質と、収穫から時間経過による状況から、短時間の焙煎で素材の特性を引き出すより、水抜きの時間を長く取ることによって、素材の欠点を修正し、なおかつ適正なカラメル化で飲料としての質を向上させることが有効と思われた。

メンバーの大方の意見も同じだった。

何バッチか水抜きの時間を伸ばし、尚且つ初回のサンプルローストと同じく、一ハゼから終了までの時間と温度を同じにしたものをローストした。

カッピングによって、水抜きの時間を延長することによる、ウッディーの修正はある程度効果があることが確認できたため。今度はより深いローストを試みて、ローステイングポイントを探っていった。

しかし前年と同様に、今年もディードリッヒには、終盤の温度と時間調整に手を焼いてしまった。

P10207751 今回の課題は今一度、終盤の温度コントロールをつかみ、それに伴う深煎りの適正な上昇カーブを描いて、最適なローステイングポイントを探ることであった。

一バッチローストした後に、前回のよかった3ロットを再度カッピングしてみた。

a 19分45秒―218度の中煎り
b 19分44秒―226度の深煎り
c 17分23秒―212度の浅煎り

aは水抜きの時間を伸ばして、ウッディーがどう治まるかを確認するために、サンプルローストと同じ中煎りにしたもので、bは深煎りの良し悪しを判断するためにローストした。

両者の一ハゼはほぼ同じ時間であったから、トータルの時間と最終温度から、深煎りの急激な上昇がお解かりいただけると思う。

ドライディスティレーションにおける温度上昇率は適正値があり、これをオーバーするとマウスフィール・アフター・スイートが落ちる。

カップを対人関係として例えるならば、硬く緊張していて、落ち着きがなく、相手の感情や、性格が伝わってこない、カップする側もどう捉えて良いか戸惑ってしまう――そんな感じだ。

上質な素材で、温度上昇率が適正であれば、まずもってマウスフィールが向上する。そしてアフターの奥行きが広がり、心地よい甘さでフィニッシュする。aのカップ結果から、bが適正な温度上昇であればもっと良い結果が出てくるはずだ。

cは浅煎りで、水抜きもドライディスティレーションもやや早めに調整して、酸の状態をみたが、やはり時間の経過によるスポイルで、明るさとライブ感が落ちている。しかし、思いのほか悪くはなく、この焙煎度でも魅力的なローステイングポイントがあると思う。

P10207891_2 さて、今回の最重要課題の終盤の温度コントロールだが、またしてもコントロールにてこずってしまった。

今回は警戒しすぎて、火力を落とすタイミングが早すぎ、最後失速してしまうことが多かった。

火力を落とすタイミングを修正しながら、ようやくタイミングが取れるようになり、提出用の数バッチをなんとか作ることが出来きた。そして最終のカップをとり、提出のロットを決定した。

前回以上にマウスフィールは向上したが、しかし深過ぎる。これでは招聘カッパーのカッピング審査では苦戦するかもしれない。

cの浅煎り~中煎りの領域で、今一度やり直したい思いを抑え、今回の最終ミーテイングを終了した。

柴田さんにエイジングと豆の発送をお願いして、会場を後にした。

もっと真摯に取り組まなければいけなかったと反省する罪悪感は、一仕事が片付いた安堵感によって薄らいでいった。

そのときは、大会結果がとんでもない結果になろうとは想像も出来なかった。