去る11月5日に、日本福祉大学付属高校にて開催された公開土曜講座に、講師として参加した。
店の常連さんの付属高校の先生から、僕のコーヒー教室を公開講座で開催してくれないかという依頼があり、快く請けさせていただいた。
コーヒー教室はもちろんセールスプロモーションなしの、啓蒙活動の一環として継続して活動しているが、営業につながることを期待していないといえば嘘になる。
ペーパーと金属フィルターの違いとか、スペシャルティーとコモディティーの違いを、抽出とカップの実践で実感していただくことをコーヒー教室のメインイベントにすれば、商品との関連が結び付き、受講生に商品を刷り込みすることが出来る。
しかし、今回は場所柄、セールストークはご法度だ。あくまでも“スペシャルティコーヒーの素晴らしさをお伝えする”という基本姿勢で、真摯に語ることを心掛けた。
さて、今回は家庭科室などの調理施設ではなく、文字どうり教室での講義になった。
そのため、抽出やカッピングは制約されるため、講義を主体にして、最後に、各生産国の代表的なシングルオリジンをカップして実感していただくことにした。
講義は栽培からパーチメントに至るまでの過程を、SCAJの出版書“多様性の祝祭”を活用しながら講義したが、各要所で生産国・生産者の状況や環境問題を出来るだけ関連付けることを心がけた。
レインフォレストアライアンスやバードフレンドリーのサスティナブル関連の認証制度はそのロゴマークと共に認知度が高まってきつつあるので、講義の最後に説明し、フェアトレードとの基本的な違いも言及した。
最後に、生産各国のシングルオリジンの浅煎り、中煎り、深煎りをカッピングしていただき、各自の思い込みを修正して、好みのコーヒーを再発見して頂いた。
お手伝いのPTAのお母様方に実際に豆を挽いていただき、グラスに粉を入れ、お湯を注ぐだけの簡単な作業だが、それだけでも産地別の香味の大きな違いを感じていただけたと思う。
フレバーの特性と、甘さ、滑らかさ、アフターの余韻をカップごとに実感として感じ取ることが出来ることで、大いに納得いただけたと思う。
結果として、僕の店舗や商品の説明まで求められ、商品リストを持ってこなかったことを悔やんだ。
スペシャルティコーヒーはまさに伝道であることを実感する。
真の伝道師は自らの教義によって、衆生を救済することを使命としているのであり、信者を増やすことが目的ではない。衆生は救済されることによって、結果として信者の道を選ぶのに過ぎない。
スペシャルティコーヒーの真の伝道が、結果として売上につながるのである。