前回では、焙煎の後半にストラクチャの構築要因があることを検証するために、豆温167℃からカウントして、豆温が196.5℃に至るまでの時間を変化させてみました。
しかし、時間を変化させても、ストラクチャそのものはどの時点でも構築されていて、印象度(ピントが合っているかずれているか)が変化するだけでした。
また前半の水抜き工程でも、投入から豆温167℃までの時間を変化させ、ストラクチャの構築を検証しました。
この過程ではクリーンが大きく変化するという大変貴重な結果をえました。そのことによってレスクリーンとストラクチャを混同して解りにくかった状況から、クリーンのピンポイントをある程度解明ができることによって、ストラクチャ自体はすでに構築されていることが確認できました。
それは後半と同じように、クリーンのピンポイントを中心にして、ピントがずれたり合ったりするレスクリーンの度合いで、ストラクチャの印象度が変化しするだけのことでした。
結局、豆温167℃を基準として、前半と後半を何回も右往左往しましたが、ストラクチャ自体は構築されていて、その構築要因は解明できていませんでした。
しかし、ひょんなことから解決の糸口を捕まえることが出来るようになります。
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焙煎結果のカッピングはいつもスタバの豆と比較検討するために、必ず1カップはスタバの豆をセッテイングしています。
スタバのクラストやブレイクの圧倒的なフレバーはさておき(このあたりはなんらかの秘訣がありそうです)、スタバのクリーンでドライなカップと自分の焙煎のカップを比較検討することによって、クリーンの達成度とか、ドライとストラクチャの差をいつも確認できるからです。
スタバのクリーンを基準として、レスクリーンとストラクチャを混同しないように注意すると、自分の焙煎はクリーンの問題はさておき、ストラクチャはいつも構築されているのではないか?と思えてきました。
スタバの焙煎ノウハウはもちろん知りえませんが、クリーンの“質感”から、短時間焙煎であることは想像ができます。
要するに投入からの水抜けまでの時間が短いわけですが、自分の短時間焙煎においても、スタバと同じようなクリーンを達成できるピンポイントの時間帯が解明できてるに至って、前半・後半もストラクチャはいつも構築されいることが確認できました。
だとすれば、残るのはその中間地点での操作、すなわち釜の内部温度を一気に上げる過程がストラクチャの構築要件でないのだろうかと、思い至ったのです。
実際、検証をしてみると、それはあっけないように結果が出ました。
水抜けを確認してからも、釜の内部温度を一気に上げず、ゆるやかに上昇させながら、ラストのまでの豆温と時間を従来の焙煎と同じになるように調整してみました。
これは一般的なロースターが、通常になされている焙煎操作に戻っただけのことです。
この焙煎のカップはまさにストラクチャは構築されませんでした。(素材のポジティブ評価のストラクチャとは違います。)
アフターの重層性とフレバーの印象度が後退してドライが前面に出てくるため、クリーンがより強調され、軽やかとか心地よさの点で魅力的なカップになります。
スタバも含めてほとんどのロースターのカップと同じ結果となります。
しかし、ストラクチャそのものの欠如が結果として、印象度にかけた薄っぺらいカップとなることも否めません。
ーースタバの場合、この点をじつに考慮していて、その不足を補うようにフレバーの構築(ストラクチャではありません)が何らかの方法によって意図的になされているように思えます。ーー
今後まだ精緻な検証が必要ですが、ストラクチャの構築は全体の水が抜けた後、釜の内部温度を一気に上げることによって、すなわちドライディスティレーションの段階で釜の内部温度が一定以上の温度になっていることによって構築されることが検証できました。
思えば、これまでの焙煎は、水抜が抜けた後の釜の内部温度を一気に230℃前後に上げる操作は終始一貫として焙煎工程に組み込んでいましたから、結果としてストラクチャはいつも構築されいたわけです。
167℃を基点として前半と後半に分けて、その時間的変化でストラクチャを検証しようとしても、、前半はクリーンの達成度によって、それが隠れたり現れたりし、後半は進化のバランスによって、同じくそれが強調されたり、弱まったりしただけで、ストラクチャはすでに構築されていたわけです。