水抜きのポイント:クリーンの達成要件Ⅱ

P1030268_960x1280_2投入量を減量することによって、水抜けを解決することができました。

しかし、投入量を減量しても、釜の余熱や火力の不足が原因で、焙煎が長くなる(水抜けまでの時間が長くなる)と元の木阿弥になりますから、減量と短時間化はワンセットのようです。

このことは、シリンダーの容量と投入量との相関関係で水抜けそのものがすでに決定していて、それを最善とする水抜けの時間があるように思います。

投入量が少ないため当たり前なのですが、その時間が想像以上に短いだけのことなのです。

上記を検証するために、投入量を釜の名目キャパの半量以下にして、投入からどのくらいの時間で、豆の表面温度が何度になっていれば、水抜けはOKか?という切り口で試みました。

とりあえず基準とする豆の表面温度を167℃に設定して、投入から何分でこの温度を通過すれば、水抜けが最善となるかを検証しました。

具体的には、初期火力と投入温度(表面温度・内部温度)を変化させることによって、投入後のボトム温度を変化させ、豆温度が167℃に至るまでの時間を、30秒単位で延長したり、短縮したりして検証しました。

出発はとりあえず167℃を9分で経過させ、カップを検証します。

そして、30秒遅くして9分30秒で経過させたものと、30秒早くして8分30秒で経過させたものを比較カップすれば、延長か短縮かの方向は見えてきます。

しかし、30秒早くしたものと、30秒遅くしたものを比較する場合、167度から終了の釜出しまでを、全く同じ条件で進行しなければ意味がありません。それにカッピングスキルの未熟からカップが定まらいことが多く、この検証は簡単なようで、なかなかうまく行きません。

結果、10~11分にまでもいってしまったりして、右往左往していました。

そんなドタバタを繰り返しながら、167℃を基準として、投入温度・火力・ボトム温度を何度も模索しながら、“投入から167度に至るまでの最適な水抜けの時間”を検証をしてきました。

この検証作業の結果、167℃に至る時間が短くなればなるほど、水抜けは良くなり、カップは向上するという結果をえました。

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基準とする豆温を167℃にすることは、便宜的に通過の目安を作ったにすぎません。もちろん短時間のため、その時点では水はまだ抜けていないことは想像していただけると思います。

目安(基準点)は165℃でも170℃でも、あるいは175℃でもいいのです。

なぜ167℃にしたか?・・・・・恥ずかしいのですが、“過去の水抜けの思い込み温度”からそうなったのであり、深い意味はまったくありません。

要は、前半のペースが水抜けを支配していることから、便宜的に目安の豆温度を決めて、投入からその豆温度に至るまでの時間を変化させて、「最適な水抜けのペース」を掴むのが目的なのです。

減量した投入量が適正であれば、それは劇的にカップを変化させ、最適なペースを容易に掴むことができます。

投入から6分前後に豆温度が167度に至る頃から、カップは変化しだします。

そして30秒短縮して5分30秒、更に30秒短縮して5分・・・・・

個々の豆の特性によって違いますが、この周辺に豆温167℃が至るペースが、水抜けが最適な前半のペースと思われます。

そして、最適な時間で豆温が167度にいたっても、水はまだ豆の内部組織に引き篭っていますから、引き続きそのままのペースを維持し、175℃前後から注意深く匂いを探っていきます。

そして、蒸気を含んだ匂いから、含まない匂いに変化した時、一気に火力をマックスにして内部温度を引き上げます。

温度感知にタイムラグがありますから、目標とする釜の内部温度に至る前に素早く火力を抑えていきます。

そうした作業の過程で、ファーストクラックは始まります。

これは奇しくも、ACEセミナーでのS氏が提案した7分30秒でのファーストクラック、ワタルがHP上で開示しているサンプルローストにおける、8分のファーストクラックと符合してきます。

良識ある、真っ当なカッパーたちが焙煎とカップを繰り返しながら、突き詰めていくと、全く同じようにこの範囲に至ることは、偶然ではなく必然としての法則があるように思います。

名だたる欧州の老舗や名声店のローストマスター、米国のコーヒールネサンスを切り開いたローストマスター、そして現時点での第三極のローストマスターたち。

彼らが仲間内で、密かに継承してきた焙煎のエッセンスは、必然的にピタリと一致していると思うのです。

そして、あくまでも現時点での推測ですが、ジョージ・ハウエルのフルフレバーローストは、上記の水抜けポイントを意図的に延長することによって、水《成分》を少し残し、フレバーや甘さ・滑らかさの印象度を上げていると思います。

勿論、後半のドライディスティレーションの段階で、素早く釜の内部温度をあげ、意図的に残した成分の進化をいかんなく達成する作業も怠っていないと思います。

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前半の水抜きの課題は、投入量の減量と時間の短縮によってほぼ解決したと思います。

後半のドライディスティレーションの課題は、甘さと滑らかさを両立させ、なおかつクリーンを達成することであり、その要件は一定以上の釜の内部温度と、加熱時間がポイントと思います。

これも、カウント開始から、何分以内に釜の内部温度を何度以上にするか。

そして、その内部温度をコントロールしながら、何分後に豆温度が何度に至った時に終了させるか・・・・・という後半の上昇ペースを検証していけば、最適なロースティングポイントが把握できます。

上昇ペースが緩やか過ぎると、レスクリーンで暗くなりがちなのは、内部温度が足らないことにより、甘さや滑らかさの合成不足が原因と思われます。

思ったよりかなり速いペースで、甘さや滑らかさは合成され、かつクリーンも達成されます。

しかし、速すぎるとアフターが悪くなり、甘さと滑らかさも全面に出てこなくなります。

このことは、前半の水抜きと同じように、香味の合成もピンポイントがあり、時間と温度を微妙にずらしながら、検証していくことで、ピンポイントを探るしかありません。

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正直言って、水抜きといい、ドライディスティレーションといい、カッピングスキルのなさのため、なかなか確信に迫ることができませんでした。

日々反省と精進の繰り返しです。

過去の記述を読み返してみても、カッピングスキルのなさが露呈した赤面モノばかりで、読むに耐えないものが多く、思い切って削除させて頂きました。

そんなドタバタした過程を経て、ようやくスペシャルティコーヒーの焙煎の方向性がみえてきたと思います。

それは焙煎工程に、短時間焙煎と恩師のメソドを取り込み、融合することにほかなりません。

テーゼ《短時間焙煎》とアンチテーゼ《恩師のメソド》、そしてそれを止揚したジンテーゼとしての焙煎といっても良いかと思います。

その要諦は、投入量の減量と十分な釜の予熱を確保することによって、従来より低い内部温度で、なおかつ短時間内に水を抜くこと。

そして、水抜けを確認したら、一気に釜の内部温度を引き上げて、香味の進化を達成することです。

この新しい焙煎コンセプトから、焙煎の核心に迫っていこうと思います。

引き続き、前半の水抜き工程を検証し、水抜けと成分の相関関係を検証してみます。