友人のきらきらと輝くコーヒーに導かれるように、前半の水抜き工程において、段階的にガス圧を下げていくと、僕のコーヒーもきらきらと輝き始めました。
もちろん投入から5分30秒で、豆の表面温度が167℃に至るペースを維持します。
そのためには下げたガス圧に対応する分、投入温度を上げていきます。
そしてガス圧が50Hp~45HPに至った段階で、僕のコーヒーも友人のと比べ遜色ないようにきらきらと輝くようになってきました。
ゆらゆらと消えそうな炎は、かつて恩師が,スペシャルティコーヒーの焙煎メソドを提案した時を思い出させました。
常識を覆す恩師の焙煎メソドに、スペシャルティコーヒー(=ニュークロップ)の焙煎はかくあるべき!といったイメージを強烈に刷り込んでしまい、闇雲に低いガス圧でトライしては、失敗を繰り返していました。
多くの仲間は早々に、このメソドに見切りをつけて、当時主流になりつつあった“高温短時間焙煎”に移行していきました。
しかし、当時と今回の場合の決定的な差は、前半の水抜き工程の時間の圧倒的な差にあります。
そもそも、投入からわずか5分30秒で豆の表面温度が167℃に至るのは、短時間焙煎そのもののペースで、当時では考えが及びもしなかった領域だと思います。
低いガス圧で、短時間焙煎を可能としたのは、まさに圧倒的な釜の余熱にほかなりません。
この結果を釜の内部温度の変化から見てみると、驚くべき数値が出てきます。
投入からの進行ペースを変化させないのに、釜の内部温度が20度以上も低くなっていたのです。
焙煎ペースが同じでも、釜の内部温度は20度も低くい!
そもそもこれが“低温焙煎”と言われる所以です。
しかし、低温でだらだらと焙煎しても全くだめで、投入からリズミカルに芯から水が抜けていく一定のペースがあり、それが短時間焙煎の領域ペースに入るくらいの早いペースなのです。
この本質的に矛盾する低温での水抜きと、短時間焙煎の融合の第一のポイントは、釜の余熱の確保と投入量の減量であったわけです。
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友人の焙煎は高温短時間焙煎であることは察しがつきます。
グアテマラの封を開けた時、シングルオリジンではなく、何かのブレンドか?と思ったほど、ローストの極端なばらつきがありました。
これはマイクロロットにたまにあるのですが、何らかの理由で、クロップの段階からすでにばらつきがあり、今回のグアテマラはかなりのばらつきがあったようです。
これを圧倒的な火力で、強引に焙煎すると、ばらつきがさらに強調されるように焙煎されます。
かなり早い焙煎であることが推測されます。
カップからも、投入してわずかの時間に、表面から焙煎が進行していくさまがうかがえます。
高温短時間焙煎は、水抜きの完了と、ドライデスティレーションの完了がぴたりと一致すればよいのですが、これがなかなか一致しません。
最悪なのは水抜けが終わっていないのに、ローストが先行してしまうことで、ひどいアフターが出てしまいます。
友人の場合は、水抜けが完了した時点で、オーバーロースト(この場合ドライデスティレーションの時間不足+高温によるロースト)気味になり、水抜けは良いのに、アフターが歪になってしまうことだと思います。
この水抜きが完了している領域での、短時間焙煎の欠点は、カッピングしていても、素材のオイル分のコーティングによって、その欠点が隠されてしまうという恐ろしい欠点があります。
素材がよいものだからこそ、なおさらにこの欠点が見えてこなくなるのです。
カッピングでは何ら問題ないと思っても、実際に、特にペーパーで抽出した場合、ペーパーによるオイル分の損失で、焙煎の欠点がカップに現れてきます。
要するに、表面焼けの欠点が抽出されたコーヒーカップに出てきます。
これはペーパーフィルターの欠点ではなく、焙煎の欠点なのです。
カッピングと同様に、今人気の金属フィルターによる素早い抽出は、この焙煎の欠点を補ってくれますが、どこかその本質を見誤っていると思います。
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低温焙煎は高温短時間焙煎に比べ、水が抜けた時点での釜の内部温度や、豆の表面温度が相対的に低いことです。
このことは、それ以降の後半のドライデスティレーションにおいて、高温短時間焙煎に比べ、不利な状況になっているわけで、素早く釜の内部温度を引き上げて、理想的なドライデスティレーションのペースに移行しなけれななりません。
当初、釜の内部温度が200~185℃の場合、水が抜けた時点で、フルバーナーにすれば、理想的なドライデスティレーションのペースに移行できました。
しかし、180℃の場合は、僕の改良型焙煎機(バーナーのパワーアップバージョン)をもってしても、理想的なドライデスティレーションのペースに全く移行できません。
およそ、時間として30~40秒ほど後手にまわってしまいます。
この30秒の後手は、悲しいほど、コーヒーの魅力をスポイルしてしまします。
友人のコーヒーのように、カップがきらきらと輝いてきても、香りがどこかすっ飛んでしまい、薄っぺらいものになってしまっています。
この30秒の後手を取り戻すためには、さらなるバーナーの増設が必要であることは、言うまでもありません。
メーカーにバーナーのノズルとプロパン用のチップを6個セットで購入して、近所の鉄工所で既存のバーナー本体に、鉄管を増設して、ノズルを増設しました。
増設したバーナーの設置は、ガス屋に依頼して、正式な手続きを取ります。
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点火して,化け物のような圧倒的な火力に、「少しやりすぎかな?」と不安になりましたが、多い分はガス圧で調整できるわけですから、問題はありません。
むしろまだ足らないことのほうが問題で、追加のノズルが入り込むスペースがないほどの目いっぱいの状況をみて、不安になってきました。
今後の投入量増加を視野に入れているためです。
しかし、焙煎結果は大正解で、浅煎りの焙煎でも、理想的なドライディステイレーションの上昇カーブに乗せることができました。
それは、水が抜けた段階から一気にフルバーナーにして、1分前後に釜の内部温度が230~240℃まで到達することが可能になったためです。
低温焙煎と短時間焙煎の融合の第二のポイントは、水抜けが完了した後、一気に釜の内部温度を上昇させることができる、圧倒的な火力が必須であることです。
次回からは、この第一と第二のポイントを、よりダイレクトに釜の内部温度と豆の表面温度との相関関係から考察していきます。
焙煎の核心に迫っていきます。