実は多くの小型焙煎機のオーナーの方々から、低温焙煎メソドは小型の焙煎機では、余熱の確保が脆弱のため、うまくいかない、、、といったご意見を多くいただいていました。
確かに余熱を確保するために、投入前の釜の加熱方法は、ダンパーを閉めて、300度以上に引き上げて、ダンパーを閉めたまま温度を落とし、そしてまた引き上げてといった、手の込んだ操作が必要です。
実際1バッジごとに40~50分ほどの時間がかかり、短時間焙煎であるくせに、生産効率が実に悪い方法です。
しかしこうした過程を経て余熱を確保しても、1キロ釜などの小型の場合、投入量の関係から、余熱が少しでも高すぎると、コントロールが非常に難しくなる傾向もあるようです。
余熱の確保が脆弱というより、むしろ逆に余熱を持て余してしまう傾向のほうが多いように思います。
ずっと以前、井上製作所の井上さんが、たしか1キロの小型の焙煎機のシリンダーを1センチ!くらいの厚さのシリンダーを作り、それに交換して実験したことありましたが、それこそガスを切っても勝手に進行してしまったことを思い出します。
シリンダーの容量や余熱と豆の量の関係があり、小型になるほど難しく、あまり余熱に頼らないで、火力と余熱のバランスの取れた焙煎ノウハウを構築する喫緊の課題を痛切に感じました。
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何とか解決したい!といった思いと。今一つ自分の焙煎に一抹の不安を抱いていたため、10月からの1か月余りは、時間が許す限り、この検証に没頭していました。
具体的な方法論として、まず過度な余熱を避け、その分投入時の火力をアップして、時間と温度のバランスをとることが必要と思われます。
しかし、あくまでも水抜き工程の釜の内部温度はボトムから上昇させないことと、投入から5分30秒で、豆の表面温度が167℃に至ることが条件になります。
余熱を下げる限り、その分釜の内部温度の中点を上げないと、上記の時間制約が満たされません。
おそらく、177℃前後といった温度では時間がかかってしまい、180℃前後の内部温度かそれ以上の内部温度が必要と察しがつきます。
これらの要件を満たす焙煎を何回かトライすることで、大まかな結論が出てきました。
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まず、投入温度はダンパーを閉めて加熱し、釜の内部温度が240℃前後、豆の表面温度のセンサーが200~205℃になったら、豆を投入します。
(この温度関係になるには、1バッチ目と、2バッチ以降で若干違ってきます、ここではその詳細は省きますが、詳細を知りたい方はご質問ください。)
火力を従来より、強めにして、中点に至るペースを探っていくと、およそ1分30秒で、豆の表面温度が中点に至ります。
その後、遅れて釜の内部温度が中点に至りますが、初期火力が強すぎると、中点が高くなり、水抜きのペースが速くなってしまいますし、弱いと中点が低くなり、水抜きのペースが遅くなってしまいます。
結論から先に言えば、豆の表面温度の中点が110℃~118℃に至って、その後釜の内部温度が180℃~185℃に至り、その中点を火力の微調整で、維持することによっておよそ投入から6分30秒に豆の表面温度が167℃に至ります。
もちろんこの温度帯の幅は、投入する生豆の種類やコンディションで変わってきますが、火力の調整によって、釜の内部温度の中点を意図的にもっていくことが、最大の特徴になります。
(余熱が低い分、初期火力を強くして落ち込みを防ぎ、頃合いをみて火力を落として中点の着地点を探っていく操作は、前々回のAGFの焙煎とぴたりと一致します。)
豆の表面温度の中点が高止まりした場合、火力の調整で、釜の内部温度の中点をいつもより、低くもっていけば上記の水抜きのペースに収まります。
ここで最大の疑問は、水抜けのペースは5分30秒で豆の表面温度が167℃に至るペースではなかったのか?なのですが、何回トライしても水抜けが不十分でした。
いままでの5分30秒で167℃は、余熱がかなり大きく、その分釜の内部温度が177℃前後でした。しかし、6分から6分30秒に伸びてしまうと、やはり水が抜けなく、アフターが歪になりました。
これらの結果から、水抜けのパターンは決まっているのではなく、余熱と火力の相関関係でかなりのパターンが在りそうです。
今回の新しい試みの場合は、投入から6分30秒に豆の表面温度が167℃に至るペースがベストになります。
今回のメソドのほうが、自分の釜でもカップは向上しています。
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ここでとくに注目すべきは、浅煎りの釜出しの時間が丁度11分になり、ジョージのフルフレバーローストの11分と合致することです。
もちろんジョージのこのデータは、HP上のかなり古いプロバット時代のデータであって、現在のスマートロースターのデータではない可能性が大ですが、ドラム式の焙煎機に限れば、合点がいくカップです!
そして、後半のドライディスティレーションがきちんと出来れば、フルシティ以降のカップはスタバと同レベルのパフォーマンスをしめします。
次回は前回のお約束どうり、後半の理想的なドライディスティレーションのカーブを模索していきますが、今回の小型の焙煎機のメソドで模索します。
ということは、後半のスタートが1分延びて、7分スタートでいきます。