前回は投入から7分の時点で後半をスタートさせ、1分ごとに釜の内部温度と豆の表面温度をチェックしながら、最適なロースティングポイントを探りました。
僕の場合、別にもう一個ストップウォッチ用意して、7分の時点でスタートさせています。
時間チェックに集中したいためなのですが、一個のストップウッチで十分であればそれにこしたことはありません。
7分からのスタートから、水抜けの確認・火力のアップ・適正な焙煎カーブ、の流れに従って検証していき、最初の浅煎りのロースティングポイントを特定することが、第一のポイントです。
それは、この浅煎りのポイントさえ特定できれば、中煎り以降のロースティングポイントはほぼ特定できたことになるからです。
経験値から、浅煎り以降の上昇カーブは1分単位で5度上昇が、正確な成分進化をあらわすと思います。
特定のロースティングポイントが決まれば、次のロースティングポイントまでは1分後に5度上昇させればよいわけで、ライトローストのポイントが10分30秒で豆の表面温度が192度であれば、次のミディアムローストは1分後の11分30秒で豆の表面温度が197度であればよいわけです。
そしてミディアムローストの1分後の202度がハイローストになり、その1分後の207度がシティローストのロースティングポイントになるわけですが、ここで注意すべきは、上記の各段階のローストの名称はあくまでも、それに近いというだけで、正確な表現ではありません。
温度と時間の関係を、カッピングによって精緻に判断した結果であって、それがたまたま浅煎りであったり、中煎りであるわけで、最初にローストの段階を決めて焙煎のアプローチをしているのではありません。
最初のポイントの10分30秒の場合、10分ジャストから11分までの1分間に、豆の表面温度を微妙に変えていって、カッピングで検証してきた結果、10分30秒で豆の表面温度が192℃前後が、ベストであったわけです。
たとえば、10分で180℃、184℃、188℃と変化させ、10分30秒で184℃、188℃、192℃と変化させて、カッピングをしてみると、10分の180℃、184℃、10分30秒の184℃、188℃はともに進化不足のカップがでてきます。
いわゆるアンダーなわけですが、アンダー気味であっても、それなりに魅力を感じるのは10分30秒の188℃です。
ボディや甘さ、フレバーがやや薄っぺらいのですが、トータルとしてまとまった形が作られています。
カップで言えば、クリーンでストラクチュアリで、飲料としての合格ラインに達しています。
あとは甘さやフレバーの厚みが足らないだけです。
このことから、10分30秒において、もっと豆の表面温度が上昇していれば、甘さやフレバーが増すのでは?という次のステップが見えてきます。
実際に豆の表面温度をさらに上げていけば、カップは向上します。
しかし、現実は多くの国産焙煎機ではこの温度帯に持っていくのは無理で、バーナーの増設が必要になります。
水抜けを確認して、釜の内部温度を一気に上げるタイミングが、投入から8分30秒で、そのときの内部温度が183℃前後ですから、わずか2分後に内部温度が60℃上がって、240℃前後に上昇していなければ、豆の表面温度が190℃以上にならないからです。
低温短時間焙煎は、前半を低い温度で進行させるため、中段から後段にかけて、短時間の間に一気に内部温度を上げて、ドライディスティレーションの遅れを取り戻す必要があるわけです。
この点、高温短時間焙煎は投入から8分30秒の時点で、内部温度が190℃~200℃前後にいたっていて、かつ豆の表面温度が180℃台後半に至っていますから、じっくりと余裕を持って、ドライディスティレーションを進行させることが出来ます。
しかし、この高温短時間焙煎の場合、中段での水抜けの段階で、表面からのローストの進行がかってに進行してしまい、アフターの欠点を作り出してしまっていることは、以前から指摘してきたとおりで、この欠点を克服するために低温焙煎のアプローチがなされたわけです。
具体的には、中段からの水抜けにおいて、芯からしっかりと抜くために、外側からのローストを抑えてやればよいわけで、それはこの時点で釜の内部温度をいたずらに上げないことであったわけです。
その結果として、後半の入り口で釜の内部温度が、高温短時間焙煎より相対的に低いわけでした。
このように、高温短時間焙煎と低温短時間焙煎の時間帯とその温度差がはっきりと認識できてくれば、焙煎の実相が見えてきます。
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話が少しずれました。
10分30秒で192℃がOKで、同じく188℃もそれなりにOKなら、10分で188℃もよさそうなのですが、どうもカップがしっくりしません。
10分30秒の188℃より、早い段階で同じ温度になっているので、より向上していてもよいはずです。
やがて、10分で188℃のカップを注意深くとっていると、ある欠点が現れてきます。