前回は、ドライディスティレーション=後半の豆の表面温度の時間経過による成分進化を検証してみました。
具体的には、水が抜けたら一気にガス圧を上げることによって、釜の内部温度をあげ、豆の表面温度をどう時間的にコントロールしたら、カップは向上するか?という検証です。
これはテーマの低温焙煎からのアプローチですが、それに限らず高温短時間焙煎や一般的な焙煎においても、ドライディスティレーションの良否は焙煎後半の一定時間から釜出しまでの、豆の表面温度の焙煎カーブで決定されます。
具体的には横軸に時間・縦軸に温度でグラフを描き、それをカップで判断していきます。
とても厄介なように思えますが、このアプローチを単純化するために、とりあえず焙煎の中段の一定の時間を出発点としてこれを固定し、かつラストの釜だし時間も固定します。
そして、固定された釜出しの時点の豆の表面温度を変化させて、どの温度値のカップが良いか、、、、をカップから判断しました。
この結果、豆の表面温度が高いほうが良いカップが得られました。(具体的な数値は前回までを再読してください。)
検証から、投入から10分30秒で192度が良好なカップが得られたわけですが、これは大幅なバーナーの増設による火力アップによって、この温度帯が可能になっています。
通常の焙煎機でこの温度帯を可能にするには、高温短時間焙煎でアプローチすれば可能になりますが、ここでは対象外とします。
では、通常の焙煎機で、なおかつ低温焙煎の手法で、この温度帯に至らせるためにはどうしたらよいのでしょうか?
まず考えるのは、早めに火力を上げていくことですが、そもそもまだ水が抜けていない状態で火力を上げることは、低温焙煎ではご法度です。
低温焙煎ではむしろ、出来るだけ火力を上げるのを遅くして、きっちりと低温の状態で水分を抜きたいのが本音です。
他の方策はあるのでしょうか?
検証では、投入から6分30秒で豆の表面温度が167℃至るペースで進行し、ほぼ水抜けを確認した8分30秒で火力をいっきにあげました。その時点での表面温度は175℃前後に至っています。
■水抜けは、前半の多少の長短があっても、およそ8分30秒で完了する。
■ということは、火力を引き上げる8分30秒の時点での豆の表面温度がもっと高ければ、火力が脆弱な通常の焙煎機でも、釜出しの10分30秒の時点で豆の表面温度を192℃に至らせることが可能となる。
おそらく8分30秒の時点で、179~180℃になっていれば可能性あり。
■そうするためには、6分30秒よりもっと早い時点で、豆の表面温度が167℃に至るペースを作る。具体的には以前のように5分~5分30秒で167℃に至るペースを作る。。
■そうすることによって、6分30秒・171℃、7分30秒・175℃、そして8分30秒で179℃のペースを作ることがでる。
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以上の仮設を検証した結果、ものの見事に10分30秒で、豆の表面温度が192℃に至らせる事が出来ました。
僕の焙煎機では火力が強すぎて、火力の引き上げ幅をかなり抑えながらの進行でしたので、一般の焙煎機でも可能な範囲と思います。
また、同じように前半の豆の表面温度を随時引き上げて検証していけば、いずれは火力を無理に引き上げなくても、10分30秒で、豆の表面温度が192℃に至らせる事が出来きます。状況によっては逆に火力を“引き下げ”ながらのコントロールが必要となる領域に至ります。
これはまさに、低温短時間焙煎と高温短時間焙煎の分水嶺を模索していることにほかなりません。
火力を無理に引き上げなくても、10分30秒で、豆の表面温度が192℃に至らせる事が出来きれば、もうこれは通常の高温短時間焙煎です。
じゃあそれより前の、水抜けを確認して、火力を引き上げるのが低温焙煎か?と言えば違うと思います。
どの時点が低温焙煎か?---そのあたりをハッキリさせることが、今後の課題になります。
しかし、カップは残念ながら駄目でした。
実はとんでもない重要なポイントを忘れていました。