短時間焙煎への挑戦  Ⅱ

前回は経験則として、一定容量の焙煎機で、多く投入すれば焙煎時間が長くなり、少なく投入すれば焙煎時間は短くなるという結論を得ました。

この結論は、焙煎を少しかじれば、イメージとして想像できることですが、それを実際に焙煎とカッピングを繰り返して導き出したわけです。

たまたま5K釜であったわけですが、それぞれの投入量での妥当な焙煎時間が、経験則から具体的に導き出されました。

ただそれは、ランニングコストなどの経営指数が背景にあって、あくまでも妥協したカッピングであったものでした。

しかし、妥協せずに、投入量を減らして、短時間化を突き詰めていくと、ある時間帯で劇的にカップは向上します。

シティローストでおよそ、13分~14分に至るペースになると、抜けるような明るさーブライト感が出てきます。フレバーも輪郭がはっきりとしてきて、その豆のテロワールが把握できてきます。

そして、何よりもマウスフィールの向上がなされます。奥行きがあって立体感があるストラクチャリーが出てきます。

ひと皮もふた皮もむけたーーーという表現のごとく、洗練されたカップになります。

《前回から今回にかけては、短時間焙煎を導入するための方法論です。今まで“低温短時間焙煎”と“高温短時間焙煎(一般的な短時間焙煎)”をごちゃまぜに語っていたので、多くの読者の方々に混乱をきたしていたようです。

まず、一般的な短時間焙煎を説明して、そのあとに低温短時間焙煎を説明していきます。》

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ある時ひょんなきっかけから、過去の膨大な焙煎記録の中から、短時間焙煎にチャレンジしていたころの記録群を見つけ出しました。

その中から偶然に、勉強会で恩師にお褒めをいただいたバッチの記録を発見しましたので、そのプロファイルをエクセルに要約します。

「indonesia.xlsx」をダウンロード

 
豆はインドネシア・スマトラのアチェ地方の通称マンデリンで、メルカンタからひっぱてきたものと思います。

焙煎時間は14分でフルシティ、最終の釜出し豆の表面温度は207.5℃になっています。

後半の豆の表面温度と釜の内部温度の記載が若干不備でしたが、できる限り前後の記録から抜けた数値を推測して記入しています。

ガス圧は記録がないのですが、投入から1分30秒前後に至った、豆の表面温度とその時の排気温度の中点は104.4℃と164℃ですが、投入から7分の時点で豆の表面温度166.4℃で、排気温度が204℃に上昇していますから、ある程度の強い火力で進行をさせていると推測できます。

その後、ファーストクラックから釜出しまでは、釜の排気温度を比較的安定させて、緩やかに上昇させています。

次回以降、低温短時間焙煎の詳細を示していきますが、投入からの6~7分後の排気温度と、ファーストクラックから釜出しまでの排気温度が全く違う流れであることがご理解いただけると思います。

それはまさに真逆で、短時間焙煎と低温短時間焙煎の違いが明白となり、そのことがどうカップに影響しているかを解明していきます。

「スイート、クリーン、スパイシー、アーシー、、、」恩師の口から発せられたコメントから、焙煎が出来た!と背筋が震えたことを今も思い出します。

まさにエポックメイクな出来事でありました。

僕も含めて当時のメンバーや、多くのスペシャリティロースターはこの短時間焙煎を習得して、現在にあります。

しかし、いまだ恩師の低温焙煎はその真実の姿を極められていません。
次回以降はその真実のを姿を現して行きます。

次回をご期待ください!