1月中はホームページ公開の最終作業が忙しく、ブログが更新できなかったことをお詫び申し上げます。
また、HP制作会社との連絡で、このブログを活用したことも重ねてお詫び申し上げます。
公開したものの、アメリカを中心としたスペシャルティコーヒーの遍歴や低温焙煎メソッド、美味しい珈琲の淹れ方などはまだ途中で完成していません。
低温焙煎メソッドのコーナーでは、希望する方の低温短時間焙煎導入のお手伝いをして、焙煎機の構造から、バーナーの増設、そして低温短時間焙煎をトライした結果として、導入後と導入前のカップの変化を比較した詳細なレポートを報告したいと思っています。
ご希望の方はメールで申し込みください。
また、抽出のコーナーもドリップやプレスだけではなく、他の抽出器具も紹介したいと思っています。特に、エスプレッソを充実させていく予定です。
多くの方が参加するページを作ってまいりますので、投稿をお待ちしています。
日本全体のコーヒーのレベルアップに一助できればと思っています。
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さて、前回までは高温短時間焙煎と低温短時間焙煎を比較検討してきました。
[高温短時間焙煎と低温短時間焙煎 Ⅲ]で、最終工程の成分進化の詳細を検討することをお約束しましたが、この段階はいろんな変数が複雑に絡み合って、焙煎の最大の“謎”でもあります。
僕自身も整理がつかなくて、どう説明してよいか思案していました。
何回も書き直しては、読み返し、そして書き直し、、、を繰り返しても、後半の実態を上手く説明することが、なかなかできません。
それは、後半は後半で新たにをスタートをして、成分進化のペースを計測していくか?それとも従来どうりに投入からのペースだけを計測していけばよいか?の結論が出てこなかったためです。
???どういうことかと言いますと。
高温短時間焙煎も含めて通常の焙煎は、投入から豆の表面温度がどのくらいのペースで進行して、何分になったら何度でファーストクラックがきて、最後は投入から何分の時、何度で釜出しをするか?という、すべて投入時点からの時間進行で焙煎の進行管理をします。
(それが一番シンプルで、解りやすいからですが、もうひとつ重要な要素がありますが、後述します。)
低温短時間焙煎も同じアプローチでいってもよいのですが、水が抜けた時点で焙煎を前半と後半を明確に分けるため、水が抜けた時点から後半をスタートさせるほうが、より自然なアプローチのように思えます。
それは季節変動(気温・湿度)や豆の種類(標高の差・クロップの差)で水抜けのタイミングが微妙に違ってくるからです。
水抜けのタイミングが前後するということは、投入から水抜けまでの時間が前後するということで、それに応じて釜出しのタイミングも前後する、すなわちトータルの焙煎時間が変化することで、その方がより理想的な焙煎なのでは?と思ったからです。
ストップウオッチを2個用意して、1個はスタートからトータルの時間を計測し、もう1個は水抜けを確認して火力を一気に上げるときにスタートさせます。
たとえば、通常9分で水が抜けたら、火力を上げて、ストップウォッチをスタートさせ、2分後の11分で豆の表面温度が192℃にいるようにして、終了します。
この場合は、以前グラフで比較したように、高温短時間焙煎とピタっと釜出しの地点で一致します。
ところが、何らかの原因で、8分45秒で水抜けが確認できたら、この時点で一気に火力を上げストップウォッチをスタートさせます。
スタートからは上記の後半のペース、2分で192℃に収まるようにすると、トータルでは10分45秒の焙煎になります。9分15秒で水が抜ければ、トータル11分15秒の焙煎になるわけです。
水抜けが前後した分、トータルの焙煎時間は前後するわけです。
しかし、残念ながらこのアプローチはなぜかしっくりしません。
フレバーはそこそこに出てきますが、フラットでレスクリーンっぽく、どこかずれているような気がします。
要するに、ピタッとはまったカップが出てこないのです。
この“ピッタとはまった”カップは、高温短時間焙煎でよく経験された方もあると思いますが、焙煎の時間と温度の進行管理が、ピッタとはまったときに、抜けるような明るいクリーンと、ストラクチャリのカップが突如として現れます。
ですから高温短時間焙煎においては、この焙煎の時間と温度の進行管理を、まずもって重要なアプローチとします。
前回のプロバットによる焙煎も、豆の種類や投入量の差を、細心の注意をはらって、いつもと同じラインをトレースすることに腐心していました。
これらのことから、高温短時間焙煎の核心はこのピッタとはまる焙煎プロファイルを特定して、どんな条件下(投入量、豆の硬度、室温・湿度、etc.)であっても、そのラインを上手くトレースすることです。
そして、ここからが重要で、低温短時間焙煎は低温焙煎のアプローチを短時間焙煎に圧縮して取り込むことによって完結したわけですから、あくまで短時間焙煎の範疇にあって、その制約は拭い去ることができない宿命のようなもののようです。
ということは、投入から釜出し迄の全体の焙煎プロファイル、投入から11分で豆の表面温度が192℃前後、12分で197℃前後、、、と決まっていると解釈したほうが良いようです。
焙煎時間が前後することは、高温短時間焙煎がブレてしまうことと同じで、まさにピタッとはまらないのです。
じゃあ、8分45秒で水抜けを確認できたらどうするか?
この場合は、従来どうり間髪を入れずにすぐに火力を上げ、投入から11分で豆の表面温度が192℃になるようにコントロールします。
9分15秒の場合も、すぐに火力を上げて、投入から11分で豆の表面温度が192℃になるようにコントロールします。
水抜けのタイミングが違っていても、投入から釜出し迄の時間と豆の表面温度を一緒にさせることがカップを安定させることになるようです。
しかし、現実にはこの9分を基準として+-15秒の差はとてつもなく大きな差で、後半のデベロップメントの核心が垣間見えてきます。
基本の9分で水抜けの場合でも、2分で豆の表面温度を192℃にもっていくにはかなりの火力が必要で、通常の焙煎機の場合、バーナーの増設が必要になります。
水抜けが8分45秒の場合は、基本の9分で水抜けの場合より、15秒も早く火力を上げることができるため、バーナーの増設とあいまって、余裕をもって11分までに192℃まで持っていけます。
ところが、9分15秒で水が抜けた場合は、残り1分45秒で豆の表面温度を192℃にもっていかなければならず、原則9分のバーナー増設でも難しく、さらなる増設が必要になります。
この場合、ある一定以上の火力になると、強引な火力ゆえにカップが急に悪化しますから、
投入量の減量で対応せざるをえません。
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以上のように、低温短時間焙煎はあくまでも短時間焙煎の範疇にあり、後半の成分進化・デベロップメントは短時間焙煎と同じラインを描かなければなりません。
水抜けが遅くなればなるほど、後半のデベロップメントの時間は決まっていますから、よりタイトな時間内にデベロップさせなければなりません。
かつて恩師が、「水抜きはできるだけ奥の方が良い、しかし奥過ぎるとデベロップが不足する。」といっていた意味は、まさにこのことを意味しています。
タイトな時間内に釜の内部温度を上げて、豆の表面温度を引き上げるわけですから、数秒でも早く火力を上げたいのですが、水抜けを待たなければならないというジレンマがいつも付きまとうことになります
このジレンマを解決するには、水抜けを早く完了させればよいわけですが、これは焙煎機の能力に大きく依存しているため、その能力内で最善を尽くすには、投入量を減らすことで対応をせざるを得ないという現実がお解りいただけると思います。
優秀な純熱風型の焙煎機であれば、8分30秒以前に水抜けが可能と思いますが、純熱風型は低温焙煎を採用した場合、後半のデベロップメントにおいては欠点が出てきますので、ドラム型の焙煎機で水抜けを工夫(投入用の減量)するか、あるいは前半を純熱風、後半をドラム式といった併用できる焙煎機を考案すれば、理想的な焙煎ができると思います。
次回は、成分進化の進行法則・デベロップメントサイクルの謎に迫ってみたいと思います。